The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
小児科領域におけるCefozopranの基礎的・臨床的検討
藤井 良知阿部 敏明田島 剛寺島 周目黒 英典中澤 進佐藤 肇新納 憲司砂川 慶介横田 隆夫秋田 博伸岩田 敏佐藤 吉壮豊永 義清中村 弘典瀬尾 究河村 研一久野 邦義伊藤 和江岩井 直一中村 はるひ種田 陽一櫻井 實伊藤 正寛東 英一神谷 齊北村 賢司三河 春樹木俣 肇西村 忠史田吹 和雄青木 繁幸高木 道生小林 陽之助谷内 昇一郎小林 裕春田 恒和大倉 完悦黒木 茂一西尾 利一松田 博貴田 嘉一戒能 幸一倉繁 隆信森田 英雄黒田 泰弘白河 悦久岡本 喬関口 隆憲辻 芳郎権藤 泉小林 伸雄本廣 孝阪田 保隆佐々木 宏和吉永 陽一郎山田 秀二
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 47 巻 1 号 p. 102-123

詳細
抄録

新しく開発された注射用セフェム剤Cefozopran (SCE-2787, CZOP) の小児科領域各種感染症に対する基礎的・臨床的検討を目的として研究会を組織し, 参加18施設とその関連施設による共同研究を実施し, 以下の成績を得た。
1. 血中濃度, 尿中排泄
CZOPの小児での体内動態を10mg/kg, 20mg/kg及び40mg/kgの静注, 又は30分間点滴静注について検討した。10mg/kg, 20mg/kg, 40mg/kgの静注では, 最初の採血時点である投与後30分に最高血中濃度を示し, それぞれ21.7, 51.5, 77.8μg/mlで用量依存性がみられた。血中半減期はそれぞれ1.99, 1.85, 1.67時間であつた。投与後6時間までの投与量に対する累積尿中排泄率はそれぞれ87.3, 67.4, 84.1%であつた。10mg/kg, 20mg/kg, 40mg/kgの点滴静注では, 点滴終了時 (投与開始後30分) に最高濃度を示し, それぞれ38.1, 72.8, 95.6μg/mlで用量依存性がみられた。血中半減期はそれぞれ1.67, 1.69, 1.43時間であった。投与開始後6時間までの投与量に対する累積尿中排泄率はそれぞれ53.9, 59.7, 77.3%であった。
化膿性髄膜炎患児に50mg/kg静注投与後の髄液中濃度は, 投与後1~1.5時間で1.6~43.4μg/mlであった。
2. 臨床成績
臨床効果解析対象例は337例であった。
年齢は2~<6歳が138例と最も多く, ほとんどが9歳未満の症例であり, うち70例が1歳未満の乳児期の症例であった。性別では男児183例, 女児154例であった。疾患別には肺炎185例と最も多く, 次いで尿路感染症39例, 皮膚軟部組織感染症23例などであり, 化膿性髄膜炎は7例であった。投与量・投与期間は, 1日投与量60~<80mg/kgが218例と半数以上で, 投与日数は6~10日が188例と多かった。
疾患別臨床効果では起炎菌検出例 (A群) のうち化膿性髄膜炎100% (5/5), 敗血症100% (2/2), 肺炎98.3% (119/121), 急性気管支炎100% (13/13), 上気道感染症100% (11/11), 尿路感染症96.3% (26/27) などで, 起炎菌検出例全体では97.5% (197/202) の有効率であった。起炎菌非検出例 (B群) では, 肺炎98.4% (63/64), 急性気管支炎100% (9/9), 上気道感染症50% (3/6), 尿路感染症100% (12/12), 化膿性リンパ節炎92.9% (13/14), 皮膚軟部組織感染症100% (17/17), 化膿性髄膜炎100% (2/2), 敗血症の疑い50% (1/2) と起炎菌非検出例全体では95.6% (129/135) の有効率であつた。特に著効率が高くA群74.3% (150/202), B群55.6% (75/135) を示した。
1日投与量・投与回数別有効率は40~80mg/kg (分3) の投与で97.0% (258/266) であった。細菌学的効果ではグラム陽性菌80株中77株 (96.3%) が消失し, グラム陰性菌164株中155株 (94.5%) が消失した。起炎菌全体で244株中232株 (95.2%) が除菌された。
3日以上先行投与した前治療が無効と判定された93例での本剤の臨床効果は, 90例 (96.8%) が有効以上であり, 細菌学的効果では前治療で消失しなかつたグラム陽性菌25株中24株 (96.0%) が消失, グラム陰性菌57株中53株 (93.0%) が消失し, 全体では82株中77株 (93.9%) が除菌された。
3. 副作用・臨床検査値異常
安全性の検討は364例で行った。副作用は11例 (3.0%) に発現し, その内訳は下痢 (軟便, 水様便) 7例 (1.9%), 薬疹 (皮疹, 発疹, 膨疹) 4例 (1.1%) であった。臨床検査値の異常は54例に認められ, その主なものは好酸球増多20例 (6.3%), GPT上昇20例 (6.3%) であった。副作用, 臨床検査値異常に重篤なものはなく, 投与継続中または投与中止により消失または軽快した。また, 1歳未満の乳児期の症例でも臨床的に特に問題となる所見はみられず, 本剤の安全性が高いことが示唆された。
以上の成績より, CZOPは新しい注射用セフェム剤としてほぼ最終的な特性を備え, 小児科領域の感染症に対し有用性の高い薬剤であると考えられた。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事
feedback
Top