The Japanese Journal of Antibiotics
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47 巻, 1 号
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  • 新井田 昌志, 吉田 隆, 香本 晃良, 小川 正俊, 橋本 一, 出口 浩一
    1994 年 47 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床分離株であるMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 246株と緑膿菌190株に対するFosfomycin (FOM) とSulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) の併用効果についてin vitroで検討を行った。3時間血中濃度混合比による併用時のMICでMRSAと緑膿菌に対して90%以上の累積を示したのはArbekacin (ABK) とSBT/CPZの2薬剤であつた。MRSAにおいてはSBT/CPZのMICが16μg/ml以上, FOMのMICが256μg/ml以上の株においても両剤の併用効果が認められた。緑膿菌においてもSBT/CPZのMICが16μg/ml以上FOMのMICが256μg/ml未満の株において両剤の優れた併用効果が認められたが, FOMのMICが256μg/ml以上の株ではMICを1管程度低下させる併用効果であつた。両剤の併用はMRSAと緑膿菌の混合感染に対して有効であることが示唆された。
  • 中部地区β-Lactamase研究会
    伊藤 康久, 兼松 稔, 由良 二郎, 上野 一恵, 渡辺 邦友
    1994 年 47 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1986年から1991年 (1988年を除く) までの5年間に分離されたStaphylococcus aureus, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Haemophilus influenzaeのβ-Lactamase産生能と各種抗菌薬に対する薬剤感受性を測定した。
    β-Lactamase産生率はS. aureus62.3%, E. coli84.7%, K. pneumoniae65.4%, Pseudomonas aeruginosa 87.5%, H. influenzae22.4%であった。
    MRSAはMinocyclineとArbekacinに, MSSAはImipenem (IPM) に最も良好な感受性を示した。E. coli. K. pneumoniaeに対してはCefuzonam (CZON), IPM, Ofloxacin (OFLX) が優れていた。H. influenzaeに対してはOFLX, CZONが優れていた。
  • 呼吸器感染症の原因菌を中心として
    石井 良和, 大野 章, 山口 恵三
    1994 年 47 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近分離された臨床分離株 (Klebsiella pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis,メチシリン感受性Staphylococcus aureus (MSSA),メチシリン耐性S. aureus (MRSA), Enterococcus faecalls, Enterococcus faecium. Streptococcus pneumoniae)に対する, ニューキノロン系抗菌薬 (Sparfloxacin (SPFX), Ciprofloxacin (CPFX), Lomefloxacin (LFLX), Fleroxacin (FLEX), Levofloxacin (LVFX)) の抗菌力を検討した。K. pneumoniae, M.(B) catarrhalisおよびH. influenzaeに対して5薬剤とも優れた抗菌力を示し, 中でもSPFX, CPFXおよびLVFXの抗菌力がFLRXおよびLFLXと比較して優れていた。一方, グラム陽性菌では, MRSA, E. faecalisおよびE. faeciumにおいて全ての薬剤で耐性側にもMICピークが観察された。最も強力な抗菌力を有していたSPFXでもMRSAで28.6%, E. faecalisで10.0%, E. faeciumで6.7%の菌株がそれぞれ ≥16μg/mlのMICを示した。この結果は, ニューキノロン耐性のグラム陽性菌が今後増加することを示唆していると思われた。
  • 林 泉, 桜井 雅紀, 一木 昌郎, 関根 今生, 中山 耕之介, 塩谷 譲司, 吉田 隆, 新井田 昌志, 小川 正俊, 香本 晃良
    1994 年 47 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床でMRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus) が分離される場合, Pseudomonas aeruginosaとの複数菌感染の姿をとることが多い。これら2菌種複数菌感染に対するFosfomycin (FOM)+Sulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) の併用効果をin vitroにて検討した。
    両薬剤の併用効果を評価する方法としてチェッカーポード法によるFIC indexを求める方法, 殺菌曲線による生菌数の減少をLog reductionで算出する方法, 電子顕微鏡による形態学的検討などを行った。また, 体内での薬物動態を考慮し, 薬剤の3時間後血中濃度での併用効果についても検討した。
    更に, FOMを先行させ, 60分後にSBT/CPZを投与するいわゆる時間差攻撃療法における複数菌感染症の治療例も検討した。
    検討の結果, MRSAとP. aeruginosaの複数菌感染に対しFOM+SBT/CPZの併用は著明な相乗効果を示すことが明らかとなった。相乗効果の程度を表示する方法として殺菌曲線における菌数減少をLog reductionで観察することがより真実に近いことを示すと考えられた。
  • 糸山 利生, 青木 友季世, 平谷 民雄, 内田 勝久, 山口 英世
    1994 年 47 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規イミダゾール系抗真菌剤Omoconazole nitrate (OMZ) のin vitro抗真菌活性に影響を及ぼす因子についてBifonazole (BFZ) を対照薬として検討し, 次の成績を得た。(i) OMZのCandida属菌種に対する活性は, BFZに比べて培地組成の影響をより顕著に受け, Sabouraud dextrose agar (SDA) 上でのMICよりもCasitone agar (CA) 上で得られる値の方が低かつた。(ii) 両剤の抗Candida活性は, 接種菌量の増加, 判定日までの培養日数の延長および血清の添加により低下した。(iii) 培地pHの影響は特にOMZにおいて著しく, 本剤はpH5.0で最も強い活性を発揮した。一方, BFZは培地pHの影響を受けなかつた。(iv) Trichophyton属菌種に対する両剤の活性は, 血清添加を除いて, 上記のいずれの因子の影響もほとんど受けなかつた。(v) OMZはCandidaに対して酸性域 (pH5.0) で, Trichophytonに対してはさらに中性域 (pH6.6) でも, BFZより強い殺菌的作用を示した。(vi) 酸性CA上でのCandida albicans新鮮分離株に対するOMZの幾何平均MICはBFZのそれよりも明らかに低値であつた。
  • 内田 勝久, 山口 英世
    1994 年 47 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規経口抗真菌剤Terbinafine (TBF) の皮膚組織内貯留性を明らかにするために, モルモットにTBF 6.25mg/kgおよび12.5mg/kgを1回経口投与した後, 一定時間を置いてTrichophyton mentagrophytesを背部皮膚に接種し, 発症予防効果を検討した。得られた成績は下記の通りである。
    1. TEF 12.5mg/kgを24時間前に経口投与した場合, 感染14日後までの実験期間を通して全例発症しなかった。
    2. TBF 6.25mg/kgおよび12.5mg/kg投与による発症予防効果はともに, 24時間前投与の場合が最も強く, 次に8時間前投与, 48時間前投与の順であつた。推計学的解析の結果, 各TBF投与群と基剤対照群との間で有意差がみとめられたのは, 12.5mg/kgの24時間前投与群 (P<0.01), 6.25mg/kgの24時間前投群と12.5mg/kgの8時間前投与群 (P<0.05) であつた。
    3. 発症例における発症までの平均日数は, 基剤対照群が52日であつたのに対して, TBF投与群では7. 4~13.0日と著しい遅延が見られた。
    4. 発症の初期徴候である小丘疹の局所当りの平均数は, 基剤対照群の8.8に対してTBF投与群では, 1.0~4.4と著しく少なかった。
    5. 感染14日後に行つた感染局所皮膚の培養試験による菌の陰性化率が基剤対照群にくらべ有意に低かったのは, TBF 6.25mg/kgまたは12.5mg/kg24時間前投与群 (P<0.001) およびTBF 12.5mg/kg8時間前投与群 (P<0.05) であつた。
    6. 以上の実験成績から, 局所の肉眼的所見および菌陰性化率のいずれを指標とした場合も, 経口投与によるTBFの良好な感染予防効果が示され, 本剤の良好な皮膚移行性と貯留性が示唆された。
  • 藤井 良知, 藤田 晃三, 坂田 葉子, 阿部 敏明, 田島 剛, 寺嶋 周, 目黒 英典, 渡辺 言夫, 三国 健一, 酒井 糾, 河西 ...
    1994 年 47 巻 1 号 p. 57-83
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノグリコシド系抗生物質Arbekacin (ABK) を用い小児科領域MRSA感染症 (敗血症, 肺炎) に対する臨床検討を行い, 以下の成績を得た。
    1. 臨床試験成績
    総投与症例18例のうち, 除外・脱落を除いた10例 (敗血症3例, 肺炎6例, 尿路感染症1例) を臨床効果の評価対象とした。症例構成は, 新生児及び乳児が各1例, 幼児6例, 小児2例であつた。
    臨床効果は, 著効5例, 有効2例, やや有効3例で, 有効率は70.0%であつた。疾患別の有効率は, 敗血症100%, 肺炎50.0%, 尿路感染症100%であった。
    菌消失率は全体で70.0%, 疾患別では, 敗血症, 尿路感染症で100%, 肺炎で50.0%であつた。18例のうち本剤投与前に分離されたMRSA15例で, ABKのMICを測定し得たものは9例であり, MIC50は0.39μg/ml,MIC80は1.56μg/mlであつた。
    副作用は評価対象15例全例に認められず, 臨床検査値異常は評価対象12例中に1例認められ, その内容はγ-GTP上昇・蛋白尿・血尿であつた。
    2. 体内動態試験成績
    体内動態は, 新生児1例, 幼児及び小児各4例の合計9例で検討した。
    Cmaxは点滴終了直後に認められ, 4.85-8.83μg/mlであつた。T1/2は, 新生児4.96時間, 幼児1.24~2.54時間, 小児1.78~1.88時間で, 新生児は, 幼児及び小児に比べ延長する傾向にあつた。
    幼児及び小児各3例に1.92~2.7mg/kgを投与した時, 投与後6~8時間までの累積尿中排泄率は, 投与量の40.1~56,5%であった。尿中濃度は, いずれの症例でも投与後2時間までが最も高く以後漸減した。
    以上の成績より, 本剤は, 小児科領域におけるMRSA感染症に有用な薬剤であることが示唆された。
  • 竹内 裕美, 生駒 尚秋, 鈴木 健男, 中島 幹夫, 神崎 裕士, 石津 吉彦, 槙野 博規, 杉原 三郎, 太田原 舜一, 麻木 宏栄, ...
    1994 年 47 巻 1 号 p. 84-92
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域の感染症症例205例に対するCefpodoxime ploxetil (CPDX-PR, BANAN®)の有用性について臨床的検討を行った。
    1. 臨床効果は全体で75.6%の有効率であり, 急性感染症では84.9%, 慢性感染症では60.0%, 慢性感染症の急性増悪では65.6%であつた。
    2. 分離菌に対する感受性試験ではCefteramと同等以上の優れた感受性を示し分離菌別の臨床効果も感受性試験結果とよく相関していた。
    3. 細菌学的効果は菌の消失・減少を認めたものは83.3%であつた。
    4. 副作用は1例に軽度の蕁麻疹を認めたのみで副作用の発現率は0.5%であつた。
    5. 臨床検査成績ではCPDX-PR投与後に重篤な障害を認めたものはなかつた。
    以上の結果より, Cefpodoxime proxetilは耳鼻咽喉科領域の感染症に対して高い有効性と安全性を有する抗菌剤であることが確認された。
  • 中川 秀光, 山田 正信, 時吉 浩司, 宮脇 陽二, 金山 拓司
    1994 年 47 巻 1 号 p. 93-101
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ticarcillin, Clavulanic acidの髄液移行度は, Chloramphenicolやニューキノロン剤には及ばないが, セフェム系抗生物質のうち高度の移行を示すLatamoxefやFlomoxefあるいはその他の抗生物質のFosfomycinと同等もしくはそれ以上の髄液移行性と, 高いT1/2髄液・血清比がみられた。
  • 藤井 良知, 阿部 敏明, 田島 剛, 寺島 周, 目黒 英典, 中澤 進, 佐藤 肇, 新納 憲司, 砂川 慶介, 横田 隆夫, 秋田 博 ...
    1994 年 47 巻 1 号 p. 102-123
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用セフェム剤Cefozopran (SCE-2787, CZOP) の小児科領域各種感染症に対する基礎的・臨床的検討を目的として研究会を組織し, 参加18施設とその関連施設による共同研究を実施し, 以下の成績を得た。
    1. 血中濃度, 尿中排泄
    CZOPの小児での体内動態を10mg/kg, 20mg/kg及び40mg/kgの静注, 又は30分間点滴静注について検討した。10mg/kg, 20mg/kg, 40mg/kgの静注では, 最初の採血時点である投与後30分に最高血中濃度を示し, それぞれ21.7, 51.5, 77.8μg/mlで用量依存性がみられた。血中半減期はそれぞれ1.99, 1.85, 1.67時間であつた。投与後6時間までの投与量に対する累積尿中排泄率はそれぞれ87.3, 67.4, 84.1%であつた。10mg/kg, 20mg/kg, 40mg/kgの点滴静注では, 点滴終了時 (投与開始後30分) に最高濃度を示し, それぞれ38.1, 72.8, 95.6μg/mlで用量依存性がみられた。血中半減期はそれぞれ1.67, 1.69, 1.43時間であった。投与開始後6時間までの投与量に対する累積尿中排泄率はそれぞれ53.9, 59.7, 77.3%であった。
    化膿性髄膜炎患児に50mg/kg静注投与後の髄液中濃度は, 投与後1~1.5時間で1.6~43.4μg/mlであった。
    2. 臨床成績
    臨床効果解析対象例は337例であった。
    年齢は2~<6歳が138例と最も多く, ほとんどが9歳未満の症例であり, うち70例が1歳未満の乳児期の症例であった。性別では男児183例, 女児154例であった。疾患別には肺炎185例と最も多く, 次いで尿路感染症39例, 皮膚軟部組織感染症23例などであり, 化膿性髄膜炎は7例であった。投与量・投与期間は, 1日投与量60~<80mg/kgが218例と半数以上で, 投与日数は6~10日が188例と多かった。
    疾患別臨床効果では起炎菌検出例 (A群) のうち化膿性髄膜炎100% (5/5), 敗血症100% (2/2), 肺炎98.3% (119/121), 急性気管支炎100% (13/13), 上気道感染症100% (11/11), 尿路感染症96.3% (26/27) などで, 起炎菌検出例全体では97.5% (197/202) の有効率であった。起炎菌非検出例 (B群) では, 肺炎98.4% (63/64), 急性気管支炎100% (9/9), 上気道感染症50% (3/6), 尿路感染症100% (12/12), 化膿性リンパ節炎92.9% (13/14), 皮膚軟部組織感染症100% (17/17), 化膿性髄膜炎100% (2/2), 敗血症の疑い50% (1/2) と起炎菌非検出例全体では95.6% (129/135) の有効率であつた。特に著効率が高くA群74.3% (150/202), B群55.6% (75/135) を示した。
    1日投与量・投与回数別有効率は40~80mg/kg (分3) の投与で97.0% (258/266) であった。細菌学的効果ではグラム陽性菌80株中77株 (96.3%) が消失し, グラム陰性菌164株中155株 (94.5%) が消失した。起炎菌全体で244株中232株 (95.2%) が除菌された。
    3日以上先行投与した前治療が無効と判定された93例での本剤の臨床効果は, 90例 (96.8%) が有効以上であり, 細菌学的効果では前治療で消失しなかつたグラム陽性菌25株中24株 (96.0%) が消失, グラム陰性菌57株中53株 (93.0%) が消失し, 全体では82株中77株 (93.9%) が除菌された。
    3. 副作用・臨床検査値異常
    安全性の検討は364例で行った。副作用は11例 (3.0%) に発現し, その内訳は下痢 (軟便, 水様便) 7例 (1.9%), 薬疹 (皮疹, 発疹, 膨疹) 4例 (1.1%) であった。臨床検査値の異常は54例に認められ, その主なものは好酸球増多20例 (6.3%), GPT上昇20例 (6.3%) であった。副作用, 臨床検査値異常に重篤なものはなく, 投与継続中または投与中止により消失または軽快した。また, 1歳未満の乳児期の症例でも臨床的に特に問題となる所見はみられず, 本剤の安全性が高いことが示唆された。
    以上の成績より, CZOPは新しい注射用セフェム剤としてほぼ最終的な特性を備え, 小児科領域の感染症に対し有用性の高い薬剤であると考えられた。
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