The Japanese Journal of Antibiotics
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Arbekacin投与量評価へのin vitro抗菌力利用の為のディスク法によるアプローチ
松尾 清光植手 鉄男
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1994 年 47 巻 8 号 p. 1041-1052

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抄録

1. 本研究においてはArbekacin (ABK) の各種臨床分離菌株へのin vitro抗菌力 (MIC) 及びディスク感受性結果の定量的評価の臨床利用への考察をおこなった。北野病院 (大阪市) において1991年臨床材料より分離された335菌株に対するMICを寒天平板希釈法で測定した。昭和ディスク (8mm直径-30μg含有) 及び自家製ディスク (6mm直径-10, 5, 2μg含有) を用い寒天平板拡散法による阻止円直径をMIC実測値と比較し, 阻止円直径の昭和ディスク4分類評価を実施した。更に, 日本化学療法学会推奨のMIC break point 2μg/mlがディスク阻止円直径上で設定できるか否かを検討した。
2. ABK 3.13μg/ml以下で阻止された菌株はStaphylococcus aureus, MSSA 96.8%, MRSA 94%, Staphylococcus epidermidis 96.7%, Escherichia coli 100%, Klebsiella pneumoniae 96.7%, Proteus mirabilis 93.3%, Proteus vulgaris 100%, Enterobacter spp. 100%, Citrobacter spp. 90%, Serratia spp. 10.3%, Pseudomonas aeruginosa 36.7%であった。Enterococcus faecalisはすべての菌株がMIC50μg/ml以上に分布していた。
3. 昭和ディスクではメーカー指示に従い4分類システムを用い, 抗菌力を分類した。(+++) MIC≤3μg/ml,(++) MIC 3~10μg/ml,(+) MIC>10~50μg/ml,(-) MIC>50μg/mlと分類した。30μg含有昭和ディスクの場合False positiveは13.4%, False negativeは3.9%であった。10, 5, 2μg含有自家製ディスクの場合, 昭和ディスクの如くに4分類したMIC break pointのFalse positiveは3.0~8.1%, False negativeは3.9~14.6%であった。ディスクの薬剤含有量が少ない場合, False positiveの比率が少なくなり, False negativeは多くなった。30, 10, 5, 2μg含有ディスクの中で, 10μg含有ディスクがFalse positive (8.1%), False negative (3.9%) ともに少なかった。
4. 日本化学療法学会推奨のMIC break point 2μg/mlをディスク阻止円上に設定することは困難であると思われた。MIC0.39~3.13μg/mlに分布する菌株の阻止円直径は, ほぼ同じ大きさで, 細分類が困難な為である。
5. ABK100mgを点滴静注又は筋注投与した場合, 血中濃度は3.7~11.3μg/mlとなる。アミノグリコシド系剤の場合, in vitro MICの約2倍の時, 臨床効果が明確に現れ, 8倍以上で最大となると報告されている。以上の事実よりMIC break pointを2~3μg/mlに設定することはともに妥当であると考えられる。

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