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東京総合臨床検査センター研究部
1995 年 48 巻 3 号 p. 346-367
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新しいβ-lactamase阻害薬Tazobactam (TAZ) を配合したTazobactam/Piperacillin (TAZ/PIPC) の外科領域感染症における基礎的ならびに臨床的検討を腹腔内感染症 (腹膜炎, 腹腔内膿瘍), 肝・胆道感染症 (胆嚢炎, 胆管炎, 肝膿瘍) および創傷等の二次感染を対象に行った。総投与症例数は164例, そのうち臨床効果解析対象例は141例であった。その内訳は腹腔内感染症60例, 肝・胆道感染症38例, 創傷等の二次感染43例であった。臨床効果は腹腔内感染症83.3%, 肝・胆道感染症86.8%, 創傷等の二次感染95.3%, 全体では87.9%であった。また起炎菌としてβ-lactamase産生株が分離された症例における臨床効果は腹腔内感染症84.8%, 肝・胆道感染症84.6%, 創傷等の二次感染96.2%, 全体では88.9%であった。細菌学的効果における消失率はグラム陽性菌92.9%, グラム陰性菌64.3%, 嫌気性菌100%で単独菌感染全体で84.2%, 複数菌感染56.5%, 全体では69.0%であった。またβ-lactamase産生菌分離症例における消失率は, グラム陽性菌80.0%, グラム陰性菌75.0%, 嫌気性菌100%で単独菌感染全体で82.6%, 複数菌感染57.9%, 全体では67.2%であった。一方, 分離菌の消長は全菌株で79.9%, β-lactamase産生菌で79.2%であった。TAZ/PIPCと対照薬剤Piperacillin (PIPC), Cefotiam (CTM), Ceftazidime (CAZ), Sulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) との感受性分布をみると, 全菌株に対して, TAZ/PIPCのMIC50は3.13μg/ml, MIC90は50μg/mlであり, MIC50でCAZ, SBT/CPZに2倍劣るもののCTMより4倍優れ, MIC90でPIPC, CTM, CAZより4倍以上優れていた。また, β-lactamase産生菌株に対してTAZ/PIPCのMIC50は3.13μg/ml, MIC90は50μg/mlであり, MIC50でCAZに4倍, SBT/CPZに2倍劣るものの, PIPCより2倍, CTMより4倍優れ, MIC90でSBT/CPZに2倍劣るもののPIPC, CTM, CAZより4倍以上優れていた。副作用は162例中1例 (0.6%) に下痢が認められ, 臨床検査値の異常変動は152例中14例 (9.2%) に認められ, 主にトランスアミナーゼの上昇であった。以上より本剤は外科領域感染症に対し, 起炎菌がβ-lactamase産生菌であっても有効かっ安全な薬剤であると考えられた。