1995 年 48 巻 3 号 p. 427-431
慢性副鼻腔炎患者18例にCeftriaxone (CTRX) 1gまたは2gを手術の1~5時間前に点滴静注し, 手術時のCTRX血清中濃度および上顎洞粘膜組織内濃度を測定した。さらにこれに臨床薬物速度論による解析を加え, 以下の結果を得た。
1. 投与開始後1~4時間までは, 時間の経過に関係なく平均して30%前後の高い組織移行率を示した。
2. 臨床薬物速度論によるコンピューター解析の結果, 上顎洞粘膜内濃度半減期は23.1時間, 血中濃度半減期は8.2時間と長時間であった。
3. 血中濃度と組織内濃度に相関係数r=0.732で正の相関性がみられた。
4. 投与後5時間以内の組織内濃度は慢性副鼻腔炎起炎菌に対するMIC濃度より充分高い値を示し, CTRXは慢性副鼻腔炎に対し有用な薬剤であると考えられる。