The Japanese Journal of Antibiotics
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メチシリン感受性および耐性黄色ブドウ球菌へのセブメタゾールとセフォチアム, セファマンドールまたはセフォペラゾンの併用によう相乗的in vitro抗菌力増強作用
II. 接種菌量の影響
植手 鉄男松尾 清光
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1995 年 48 巻 4 号 p. 563-570

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抄録

セファマイシンとセファロスポリンの併用がメチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対して相乗的に抗菌力を増強することが知られていろ。
最近の実験動物を用いた研究および臨床研究は, in vitroの抗菌力測定の際の接種菌量の影響とその抗生物質の臨床効果が相関することを報じている。ゆえに, 本研究においてはセファマイシンとセファロスポリン併用のMSSAおよびMRSAへの相乗的抗菌力増強にたいする接種菌量の影響を吟味した。
MSSA 9株, MRSA 20株を使用し究明を行った。細菌感染の際, 感染局所における細菌数は多い場合には, 108~109CFU/mlに達することが報じられていろ。ゆえに, 106および108CFU/mlの接種菌量を用い, Mueller-Hinton寒天平板希釈法 (日本化学療法学会法) によりMICを測定した。セファマイシンとセファロスポリンの併用効果はCheckerboard法を用いて評価し, FIC index≤0.5を相乗効果と判定した。
臨床的に, 感染病巣局所の菌量は多い場合, 108~109CFU/mlが報じられていろ。ゆえに, セファマイシンのセブメタゾールとセファロスポリンのセフォチアム, セファマンドールまたはセフォペラゾンの併用によう抗菌力増強への接種菌量の影響を106CFU/mlと108CFU/mlを用いて比較吟味した。これらセファロスポリン6.25μg/ml以下の存在においてセフォチアムおよびセファマンドールはセフォペラゾンに比しより強力にセブメタゾールの抗菌力を相乗的に増強した。接種菌量108CFU/mlを用いた場合, 106CFU/mlの場合に比し, これら薬剤の併用時の相乗的抗菌力増強はMSSAにおいては有意に減少しなかったが, MRSAにおいては顕著に減少した。しかし, セブメタゾールとセフォチアムの併用においてはこのような接種菌量の影響は少なかった。
本研究で見られたセブメタゾールとセフォチアム, セファマンドール, セフォペラゾンなどの併用にようMSSAおよびMRSAに対する相乗的抗菌力増強への接種菌量の影響の臨床的解釈, 意義については不明である。しかし, 少なくとも, セブメタゾールとこれらセファロスポリンの併用はMSSA感染症治療に, またMRSA感染の可能性のある外科的手術時の感染予防にセファロスポリン, セファマイシンの単独投与より一層有用であると思われる。

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