セファマイシン, 例えばセブメタゾール, フロモキセフなどとセファロスポリンの併用はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対して相乗的に
in vitro抗菌力を増強することが知られている。しかし, セファマイシンとどのセファロスポリンとの併用がもっとも効果的かは不明である。ゆえに, 本研究においてはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) 9株, MRSA 30株を用いて, セブメタゾールとセファゾリン, セフォチアム, セファマンドールまたはセフォペラゾンの併用抗菌効果を比較究明した。Mueller-Hinton寒天平板希釈法 (日本化学療法学会法) によりMICを測定し, Checkerboard 法によりこれら薬剤の併用効果を評価した。2薬剤併用時のFIC index≤0.5を相乗的抗菌力増強と見倣した。
また, 培地のNaCl濃度がβ-ラクタム剤のMRSAへの抗菌力に影響することは良く知られている。また黄色ブドウ球菌はSalt-tolerantであり, Hyperosmoticの条件下で成長, 増加する。生理的に生体内のNaCl濃度, すなわちOsmolalityは場所により差がある。ゆえに, 食塩濃度の異なる条件下で抗菌力を測定した。すなわち, Mueller-Hinton寒天培地に食塩の無添加の場合と4% NaCl添加した条件下でのセファマイシンとセファロスポリンの併用効果を比較吟味した。
何れの条件下においても, セブメタゾールとセファゾリン, セフォチアム, セファマンドールまたはセフォペラゾンの併用はMSSAおよびMRSAに対して相乗的抗田力の増強をしめした。NaCl無添加の条件下において, 6.25μg/ml以下の低濃度のセファロスポリンによるセブメタゾールのMRSAにたいする抗菌力の相乗的増強作用は, 検討したセファロスポリン中, セフォチアムが最も強力で, ついでセファマンドール, セファゾリン, セフォペラゾンなどであった。セファマンドールはセフォチアムと同様の増強効果を得ろのに, より高濃度を必要とした。セファマンドール12-5μg/mlの濃度において, セフォチアム12.5μg/ml存在時の場合と同様なセブメタゾールの抗菌力増強を示した。
%NaClを寒天培地に添加した場合, これらの相乗的併用効果は減少した。セブメタゾールとセファマンドールとの併用効果は, 他のセファロスポリンとの併用効果に比し, NaClの影響が少なかった。4%NaClが存在する場合, セファマンドールは, 6.25~125μg/ml濃度において, 上記セファロスポリン中最も強力にセブメタゾールのMRSAへの抗菌力を増強した。
セブメタゾールとセフォチアムあるいはセファマンドールの併用のMRSAへの相乗的抗菌力増強は, セブメタゾールと他のセファロスポリンの併用より強力であった。しかし, 何れの併用が臨床上もっとも有用かはさらに究明が必要である。
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