The Japanese Journal of Antibiotics
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ニューキノロン系経口抗菌剤T-3761の一般薬理作用
(1) 中枢神経系に対する作用
古畑 邦一平岩 徹小野 哲田中 啓一霜鳥 智也牧野 伸治北村 和則相川 幸彦泉 喜宣木村 龍生中田 亮子平井 嗣郎
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1995 年 48 巻 5 号 p. 692-705

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抄録

ニューキノロン系経口抗菌剤T-3761の中枢神経系に対する薬理作用について検討し, 以下の成績を得た。
1. T-3761は100,300および1,000mg/kgの経口投与でマウスの自発運動, 協調運動能, Pentobarbital誘発睡眠, 電撃痙攣, PentetrazoleまたはStrychnine誘発痙攣, 酢酸誘発Writhing, Reserpine誘発体温下降および眼瞼下垂に対し, 影響を与えなかった。ラットの体温および受動的回避行動に対しても影響を与えなかった。
2. T-3761は10, 30および100mg/kgの静脈内投与でネコの脳波およびラットの脊髄反射に対し影響を与えなかった。
3. T-3761の200または1,000mg/kgとFenbufenを含む14種類の非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAID) との経口投与による併用において, 痙攣を誘発したマウスは認められなかった。
4. T-3761はFenbufenの活性代謝物である4-Biphenylacetic acid (BPAA) との経口投与による併用では3,000mg/kgの高用量でもマウスに痙攣を誘発しなかった。
5. T-3761は10-4MでBPAAの非共存下および共存下においてラット脳シナプス膜におけるGABA受容体結合を阻害しなかった。
以上の成績から, T-3761は中枢神経系に対してほとんど作用せず, また, NSAIDとの併用による痙攣を誘発する可能性も低い抗菌剤であることが推測された。
(-)・(S)-10-(1-Aminocyclopropyl)-9-fluoro-3-methyl-7-oxo-2, 3-dihydro-7H-pyrido [1, 2, 3-de] [1, 4] benzoxazine-6-carboxylic acid (T-3761, Fig.1) は富山化学工業株式会社で新規に開発されたニューキノロン系合成抗菌剤である。T-3761はグラム陽性菌およびPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有し, 経口投与により高い血中濃度が得られ, 感染モデルを用いたin vivo実験においても強い治療効果が認められている1)。
今回, T-3761の一般薬理作用解析の一環として中枢神経系に対する作用を検討したので, その成績を報告する。

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