The Japanese Journal of Antibiotics
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48 巻, 5 号
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  • 後藤 直正, 香本 晃良, 西野 武志
    1995 年 48 巻 5 号 p. 595-601
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas aeraginosaにより形成されたバイオフィルムに対するマクロライド系抗生物質Roxithromycin (RXM) とキノロン系抗菌薬Ciprofloxacin (CPFX) の併用効果を, 生菌数測定および走査型電子顕微鏡観察により調べた。その結果, RXMとの併用によりCPFX単独で観察された生残菌の再増殖現象の阻止と, CPFXの殺菌効果の持続, さらにバイオフィルムの破壊作用が観察された。これらの結果からRXMとCPFXの併用は, P. aeruginosa感染症の治療に意義あることが示唆された。
  • 横田 のぞみ, 古口 昌美, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加, 出口 浩一, 小田 清次, 田中 節子, 中根 豊, 福本 寅雄
    1995 年 48 巻 5 号 p. 602-609
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1993年10月-1994年3月に, 当所において検出した副鼻腔炎由来臨床分離株の主な菌種を対象とし, Cefmenoxime (CMX) の抗菌活性を知ることを目的に対照薬剤を加えた最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して, 以下の結果を得た。
    1. 副鼻腔炎に関与する好気性の三大菌種, すなわちStreptececcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalisに対するCMXの強い抗菌活性が認められた。なかでも, Benzylpenicillin (PCG)-insensitive S. pneumoniae (PISP) 及びPCG-resistant S. pneumoniaeに対するCMXの抗菌活性はAmpicillin (ABPC) に勝ること, 更にβ-ラクタマーゼ産生H. influenzaeM.(B.) catarrhalisに対するCMXの強い抗菌活性が示唆された。
    2. 慢性副鼻腔炎や歯性上顎洞炎に関与する微好気性グラム陽性菌としてのStreptecoccus constellatus, Streptococcus intermedius, Gemella morbillorum, 更に嫌気性のPeptostreptococcus spp.に対するCMXの抗菌活性は, 大部分の対照薬剤に比較して強かった。
    3. 対象とした副鼻腔炎由来株に対するCMXの菌種別MIC90は≤0.025-0.39μg/mlであり, この値は「1%CMX鼻科用剤」をネブライザーで使用した場合の, 上顎洞粘膜の移行濃度をはるかに越えていたことから, CMX鼻科用剤によるネブライザー療法においては, 主な対象菌種に対するAbove the MICの条件を満たすことが示唆された。
    Cefmenoxime (CMX) は, 武田薬品工業株式会社中央研究所で合成された注射用セフェム系抗生物質であるが, 1983年には注射剤が, 1987年以降からは耳用液と点眼液が一般臨床で使用されている1-4)。
    我々は既に, CMX耳用液に関する臨床細菌学的検討結果を報告しているが3, 4), この度は副鼻腔炎で起炎菌となり得る新鮮副鼻腔炎由来の主な菌種を対象にして5-9), 現状におけるCMXの抗菌活性を検討した。
  • 前花 淳子, 北山 理恵子, 松本 由紀, 熊野 克彦, 南新 三郎, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 成田 弘和
    1995 年 48 巻 5 号 p. 610-620
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-3761のBioassay法による体液内濃度測定法と体液中での安定性を検討した。
    検定菌としてはEscherichia coli Kp, 測定用培地としてはHeart infusion agarを用いるのが望ましく, ペーパーディスク法が感度, 精度ともに良好であった。ペーパーディスク法によるT-3761の測定下限値は, 1/15Mリン酸塩緩衝液 (pH7.0) の場合が約0.05μg/ml, プールヒト血清の場合が約0.1μg/mlであった。また, ヒト血清および尿中のT-3761は-20℃ 以下に凍結保存すれば少なくとも28日間は安定であった。
    T-3761は, グラム陽性菌およびPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有し, その活性はほとんどの菌種においてOfloxacinより優れ, グラム陰性菌に対してはCiprofloxacinとほぼ同等である1)。
    今回, 我々はT-3761の微生物学的定量法 (Bioassay法) による標準的な体液内濃度測定法を設定し, T-3761の体液中の安定性などについて検討したので報告する。
  • 田井 賢, 藤巻 久美, 清水 祐子
    1995 年 48 巻 5 号 p. 621-625
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-3761の高速液体クロマトグラフィーによる血清および尿中濃度測定法について検討した。血清はカラムスイッチング法, 尿は直接注入法で行い, 紫外部吸収検出で測定可能であった。血清では0.01-30μg/ml, 尿では0.5-900μg/mlの範囲で良好な直線性が得られ, 変動係数は7%以下であった。日内および日間の変動係数は4%以下であった。
    (-)-(S)-10-(1-Aminocyclopropyl)-9-fluoro-3-methyl-7-oxo-2, 3-dihydro-7H-pyrido [1, 2, 3-de] [1, 4] benzoxazine-6-carboxylic acid (T-3761, Fig.1) は富山化学工業 (株) で合成されたニューキノロン系合成抗菌剤であり, 幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌活性を示す1)。動物では経口投与により高い血中濃度および尿中濃度を示すが, 血中半減期は短く2), また, 痙攣誘発作用および光毒性等の副作用は弱い3, 4)ことが報告されている。
    今回, T-3761の高速液体クロマトグラフィー (HPLC) による測定法について検討したので報告する。
  • 南 新三郎, 高畑 正裕, 林 敏雄, 熊野 克彦, 池田 靖, 能見 俊彦, 高木 伸一, 大懸 直子, 恒田 礼子, 前花 淳子, 福岡 ...
    1995 年 48 巻 5 号 p. 626-642
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    各種実験動物におけるT-3761の経口投与時の吸収・分布・代謝および排泄について検討した結果, 以下の成績を得た。
    1. 各種動物にT-3761 5mg/kgを絶食下経口投与した時の最高血中濃度は, ラット>イヌ>マウス>ウサギの順に高く, ウサギを除いた各種動物におけるBioavailabilityは90%以上であった。マウス, ラットにおける本剤の血中からの消失はOfloxacin (OFLX), Ciprofloxacin (CPFX) より速やかであったが, 最高血中濃度は両剤より高かった。
    2. 本剤のラット組織内濃度は, OFLXとほぼ同程度であったが, 血清比はOFLXより低値を示した。
    3. 絶食時投与24時間後までの活性体の尿中排泄率は, マウスで27.3%, ラットで63.1%, ウサギで41.0%, イヌで63.3%であった。また, 尿中には未変化体以外の活性代謝物は認められなかった。ラットでは, 投与後速やかに尿中に排泄され, 投与2時間まではOFLXよりも高い尿中濃度を示した。
    4. 絶食時投与24時間後までの活性体の胆汁中排泄率は, マウスで2.9%, ラットで1.5%であった。
    5. 本剤のラットでの経口吸収は, 雌雄および週令で大きな差はなかったが, 食事の影響がわずかに認められ, 血中濃度, 尿中排泄率が低下した。また, 連続投与によって血中濃度推移, 尿中排泄, 組織内濃度に変化はなく, 蓄積性も認められなかった。
    6. D-ガラクトサミンで作製した肝障害ラットにおける血中濃度および尿中排泄率は正常ラットに比べやや高値を示した。一方, 塩化第二水銀で作製した腎障害ラットにおける血中濃度推移は正常ラットに比べ有意に高く持続的であり, 尿中排泄率は低値を示した。
    以上, T-3761は他のキノロン剤に比べ血中半減期が短かく, 組織への移行性は若干低いが, 良好な経口吸収性および高い最高血中濃度を示し, 他のキノロン剤と異なるユニークな体内動態を示した。
    T-376lは富山化学工業 (株) 綜合研究所で新しく開発されたニューキノロン系合成抗菌剤 (Fig.1) で, ベンゾオキサジン環の10位に炭素一炭素結合を介して種々の置換基を導入した多くの化合物の中から抗菌活性, 体内動態, 安全性に優れる化合物として選択された1-5)。
    本剤は緑膿菌を含むグラム陰性菌をはじめ, グラム陽性菌, 嫌気性菌に対し広範囲な抗菌スペクトルと強い抗菌活性を示す6, 7)。また, 各種実験的感染症に対しても優れた治療効果を示し8-11), 現在, 富山化学工業 (株) と (株) ミドリ十字の両社によって臨床開発が進められている。今回, T-3761の体内動態における特徴を明らかにする目的で, 各種動物における本剤の経口投与時の吸収・分布・代謝および排泄をBioassay法にて検討したのでその成績を報告する。
  • 北山 理恵子, 林 敏雄, 南新 三郎, 渡辺 泰雄, 成田 弘和
    1995 年 48 巻 5 号 p. 643-648
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-3761の血清蛋白結合に関する検討を行い, 以下の結果を得た。
    1. 各種動物およびヒト血清に対する結合率は16.9~27.7%であり, CiprofloxacinやOfloxacin よりもわずかに高値を示した。
    2. 薬剤濃度0.25~20μg/mlにおける, ヒト血清蛋白結合率は19.1~23.8%であった。
    3. ヒト血清蛋白結合率は, 血清蛋白濃度の減少に伴って低下した。
    4. T-3761 (2μg/ml) のヒト血清との結合率はpHの影響を受け, pH7.0, 7.4および8.0において, 各々12.4, 21.3および32.1%であった。
    5. ヒト血清蛋白との結合は可逆的であった。
    6. ウサギにT-3761 20mg/kgを経口投与した時のin vivo結合率は26.1~33.2%であり, in vitro結合率と類似していた。
    T-3761は富山化学工業 (株) 綜合研究所において開発されたニューキノロン系合成抗菌薬である。本剤はグラム陽性菌ならびにグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有し1), 経口吸収性が優れ, 血中濃度のピーク値が高く, 尿中に速やかに排泄されることを特徴としている2)。
    今回, T-3761の各種動物およびヒト血清に対する結合率, 血清蛋白結合に及ぼす薬剤濃度, 蛋白濃度ならびにpHの影響, 血清蛋白結合の可逆性を検討した。またウサギにおけるin vivo結合率についても検討したので, その成績を報告する。
  • 福田 淑子, 村谷 哲郎, 高畑 正裕, 福岡 義和, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 成田 弘和
    1995 年 48 巻 5 号 p. 649-655
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ウサギにおけるT-3761の腎排泄機序を血清中濃度推移に及ぼすプロベネシドの影響, Stopflow 分析および腎クリアランス実験により検討した。
    T-3761静注時にプロベネシドを併用すると分布容積および分布速度定数はプロベネシド非併用群のそれらとほぼ同等であったが, β 相の半減期は2.1倍に延長し, 血中濃度曲線下面積 (AUC) は3.1倍に増大していた。また排泄速度定数および全身クリアランスはそれぞれ2.3, 2.8倍の低下をきたした。Stop-flow分析では, 遠位尿細管部位での再吸収はほとんど認められなかったが, 近位尿細管部位においてp-アミノ馬尿酸ナトリウム (PAH) と同様のピークを示し, 尿細管分泌が認められた。対照薬剤として用いたOfloxacin (OFLX) はT-3761とほぼ同様のパターンを示したが, 遠位尿細管で若干再吸収が認められた。また腎クリアランス実験では, T-3761およびOFLXのクリアランスはそれぞれクレアチニキンクリアランス (Clcr) の約4.9, 3.3倍であり, PAHクリアランスの80%, 52%であった。
    以上の結果より, T-3761はウサギにおいて, 尿細管分泌の割合が高くかつ再吸収がほとんどないことが示唆され, そのことがOFLXに比べ本剤の血中半減期の短さの要因の一つとなっていると考えられた。
    T-3761はグラム陽性菌および緑膿菌を含むグラム陰性菌に対し, 幅広いスペクトルと強い抗菌力を有するニューキノロン系合成抗菌剤であり1, 2), 既存のキノロン剤と比較して, 最高血中濃度が高く血中半減期が短いという特徴を有している3)。そこで今回, 本剤の腎排泄機序を知ることを目的として, ウサギを用いて血清中濃度推移に及ぼすプロベネシドの影響, Stop-flow分析および腎クリアランス実験によりOfloxacin (OFLX) と比較検討した。
  • 田井 賢, 出町 久美子, 清水 祐子
    1995 年 48 巻 5 号 p. 656-664
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-3761のマウス, ラット, ウサギ, イヌおよびサルにおける代謝について検討した。
    未変化のT-3761以外に, 4種の代謝物すなわちグルクロン酸抱合体, グルコース付加体であるT-3761M1およびT-3761の10位の1-アミノシクロプロピル基が代謝を受けたT-3761M2およびT-3761M3が認められた。
    マウスではグルクロン酸抱合体が尿中に多く排泄されたが, 他の動物では大部分が未変化のT-3761として排泄された。
    (-)-(S)-10-(1-Aminocyclopropyl)-9-fluoro-3-methyl-7-oxo-2, 3-dihydro-7H-pyrido [1, 2, 3-de] [1, 4] benzoxazine-6-carboxylic acid (T-3761) は富山化学工業 (株) で合成されたニューキノロン系合成抗菌剤であり, 幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌活性を示す1)。動物では経口投与により高い血中濃度および尿中濃度を示すが, 血中半減期は短く2), また痙攣誘発作用および光毒性等の副作用は弱い3, 4) ことが報告されている。今回, T-3761を各種動物に投与し, 代謝について検討したので報告する。
  • 早川 大善, 林 清範, 石倉 礼美, 中福 恭子, 高野 容子, 中島 良文, 大石 正夫
    1995 年 48 巻 5 号 p. 665-670
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-3761と合成メラニンとの結合率を他のニューキノロン系合成抗菌剤と比較した結果, Tosufioxacin, Sparfloxacin, Ciprofloxacin, Norfioxacinでは約37~48%, Ofloxacinでは28%であり, T-3761では22%と最も低かった。有色ウサギにT-3761およびOfloxacinを経口投与し, 眼内動態を調べた結果, T-3761, Ofloxacinともにメラニン含有組織ではメラニン非含有組織よりも薬物濃度は高く, 持続的に推移した。T-3761のメラニン含有組織内濃度は, Ofloxacinより低かった。またin vitroでのT-3761およびOfloxacinのメラニン含有組織への取り込み量を比較した結果, T-3761ではOfloxacinより低かった。
    薬剤の中にはメラニンと強い親和性を示すものがあるが1, 2), 最近, ニューキノロン系合成抗菌剤が眼のメラニン含有組織である虹彩・毛様体, 脈絡膜・網膜に多量に移行し, 長時間にわたって蓄積, 滞留する事が報告されている3, 4)。そのため使用に際してはメラニン含有組織への蓄積性を十分考慮する必要があり, ニューキノロン系合成抗菌剤のメラニン親和性およびメラニン含有組織における動態を明らかにすることは重要と思われる。
    今回, T-3761と合成メラニンとの結合および有色ウサギを用い, T-3761およびOfloxacin経口投与時の眼内動態を検討し, 若干の知見を得たので報告する。
  • 早川 大善, 林 清範, 酒井 広志, 石倉 礼美, 高木 宏育, 中島 良文, 十亀 祥久
    1995 年 48 巻 5 号 p. 671-685
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ラットおよびマウスにおける [14C] T-37615mg/kgを経口投与および静脈内投与し, 吸収, 分布, 排泄および代謝について検討した結果, 以下の知見を得た。
    1. 経口投与した場合速やかに吸収され, ラットでは投与後15分, マウスでは投与後10分に最高血中濃度に達し, 以後速やかに消失した。
    2. ラット, マウスとも主排泄経路は尿中であり, ラットでは約84%, マウスでは約74%が尿中に排泄され, 残りは糞中に排泄された。尿中排泄率は両種とも経口投与, 静脈内投与でほぼ等しく, 吸収は良好であった。
    3. 尿中代謝物はラットでは90%以上が未変化体であったが, マウスでは約57%がグルクロン酸抱合体であった。
    4. ラットでの胆汁中排泄率は約22%であり, その約83~87%はグルクロン酸抱合体であった。また胆汁中に排泄された放射能の約41%は, 小腸から再吸収された。
    5. 臓器・組織内濃度は, 胃, 小腸を除く臓器・組織の中で腎臓, 肝臓が最も高かった。また, 血漿中濃度以下で広く全身の臓器・組織に分布した。しかし, 脳, 脊髄への移行は少なかった。
    6. 正常ラットに投与した場合, 全身オートラジオグラフィーにより放射能は, 脳, 脊髄以外の全身に広く分布していることが認められた。
    7. [14C] T-3761のラットおよびマウス血清蛋白に対するin vitro結合率は, 23~31%, 25~34%であった。
    T-3761は, 富山化学工業株式会社で合成された新規なニューキノロン系抗菌剤であり, グラム陽性菌およびPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを持つことが明らかにされている1)。T-3761の各種実験動物における生体内動態を明らかにすることは, 臨床における有効性および安全性の予測をするために重要なことである。今回我々は, [14C] T-3761を用いてラットおよびマウスにおける吸収, 分布, 排泄および代謝について検討したので, その結果を報告する。
  • 早川 大善, 林 清範, 中福 恭子, 高野 容子, 高木 宏育, 中島 良文
    1995 年 48 巻 5 号 p. 686-691
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    妊娠19日目および授乳中のラットおよび妊娠18日目のマウスに [14C] T-3761を経口投与し, 胎児移行および乳汁中移行を検討した。その結果, 以下の知見を得た。
    1.[14C]T-3761は胎盤を通過し, 母獣血漿中濃度の0.2~0.5倍の濃度で胎児へ移行した。
    2.[14C] T-3761は乳汁中へ高濃度に移行し (血液中濃度比1.3~5.8), 乳汁中濃度は血中濃度に比較して持続する傾向を示した。
    T-3761は, 富山化学工業株式会社綜合研究所で合成された新規なニューキノロン系合成抗菌剤であり, グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して, 優れた抗菌力を持つことが明らかにされている1)。我々は前報2)でT-3761は吸収が良好で, 脳, 脊髄を除く全身に広く移行した後速やかに消失し, 蓄積性がないことを明らかにした。今回, T-3761の乳汁中および胎児への移行を検討した。
  • (1) 中枢神経系に対する作用
    古畑 邦一, 平岩 徹, 小野 哲, 田中 啓一, 霜鳥 智也, 牧野 伸治, 北村 和則, 相川 幸彦, 泉 喜宣, 木村 龍生, 中田 ...
    1995 年 48 巻 5 号 p. 692-705
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系経口抗菌剤T-3761の中枢神経系に対する薬理作用について検討し, 以下の成績を得た。
    1. T-3761は100,300および1,000mg/kgの経口投与でマウスの自発運動, 協調運動能, Pentobarbital誘発睡眠, 電撃痙攣, PentetrazoleまたはStrychnine誘発痙攣, 酢酸誘発Writhing, Reserpine誘発体温下降および眼瞼下垂に対し, 影響を与えなかった。ラットの体温および受動的回避行動に対しても影響を与えなかった。
    2. T-3761は10, 30および100mg/kgの静脈内投与でネコの脳波およびラットの脊髄反射に対し影響を与えなかった。
    3. T-3761の200または1,000mg/kgとFenbufenを含む14種類の非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAID) との経口投与による併用において, 痙攣を誘発したマウスは認められなかった。
    4. T-3761はFenbufenの活性代謝物である4-Biphenylacetic acid (BPAA) との経口投与による併用では3,000mg/kgの高用量でもマウスに痙攣を誘発しなかった。
    5. T-3761は10-4MでBPAAの非共存下および共存下においてラット脳シナプス膜におけるGABA受容体結合を阻害しなかった。
    以上の成績から, T-3761は中枢神経系に対してほとんど作用せず, また, NSAIDとの併用による痙攣を誘発する可能性も低い抗菌剤であることが推測された。
    (-)・(S)-10-(1-Aminocyclopropyl)-9-fluoro-3-methyl-7-oxo-2, 3-dihydro-7H-pyrido [1, 2, 3-de] [1, 4] benzoxazine-6-carboxylic acid (T-3761, Fig.1) は富山化学工業株式会社で新規に開発されたニューキノロン系合成抗菌剤である。T-3761はグラム陽性菌およびPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有し, 経口投与により高い血中濃度が得られ, 感染モデルを用いたin vivo実験においても強い治療効果が認められている1)。
    今回, T-3761の一般薬理作用解析の一環として中枢神経系に対する作用を検討したので, その成績を報告する。
  • (2) 呼吸・循環器系, 自律神経系およびその他の作用
    古畑 邦一, 平岩 徹, 寺島 信雄, 荒井 博敏, 小野 哲, 橋場 和彦, 前川 睦子, 北村 和則, 中田 吉孝, 森 由紀夫, 棚田 ...
    1995 年 48 巻 5 号 p. 706-732
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系経口抗菌剤T-3761の呼吸・循環器系, 自律神経系およびその他に対する薬理作用について検討し, 以下の成績を得た。
    1. 呼吸・循環器系に対する作用
    T-3761は100~1,000mg/kgの経口投与でラットの血圧および心拍数に対し影響を与えなかった。
    T-3761を麻酔イヌに静脈内投与した場合, 30~100mg/kgで呼吸数増加, 10~100mg/kgで血圧下降, 心拍数増加または減少, 3~100mg/kgで後肢血流量の一過性の増加後減少を示した。また, 心電図では10~30mg/kgでST下降, 100mg/kgでT波増高およびQRS低電位化が認められた。以上の麻酔イヌでのT-3761の作用は, LevofloxacinやCiprofloxacinに比較して軽度であった。一方, 麻酔ウサギへの静脈内投与では, 100mg/kgで呼吸数増加または減少, 10~100mg/kgで血圧上昇, 30~100mg/kgで心拍数減少, 心電図では30mg/kgでT波増高, 100mg/kgでT波増高および期外収縮が認められた。これらの変化は早いもので5分以内, 遅いもので20分以内に消失した。
    2. 自律神経系および平滑筋に対する作用
    T-3761の10-5~10-4g/mlでEpinephrineによるモルモット摘出輸精管収縮の増強, 10-4g/mlでAcetylcholineによるモルモット摘出回腸収縮の抑制, Epinephrineによるモルモット摘出気管弛緩の抑制およびNorepinephrineによるウサギ摘出下行大動脈収縮の増強が認められた。また, T-3761の1,000mg/kg経口投与でマウス瞳孔の散大が認められた。
    3. 消化器系に対する作用
    T-3761の10-4g/mlでウサギ摘出回腸および結腸運動の抑制, T-3761の1,000mg/kg経口投与でラット胃排出能およびマウス腸管輸送能の抑制が認められた。
    4. 泌尿・生殖器に対する作用
    T-3761の300mg/kg経口投与でラットの尿中Na+排泄量が僅かに増加した。一方, 摘出子宮運動に対しては10-6~10-4g/mlで何ら作用を示さなかった。
    5. 血液に対する作用
    T-3761は溶血, 血液凝固および血小板凝集に対し10-6~10-4g/mlで影響を及ぼさなかった。また, 出血時間に対しても100~1,000mg/kg経口投与で影響を及ぼさなかった。
    6. その他の作用
    T-3761は100mg/kg静脈内投与でラット坐骨神経腓腹筋標本の電気刺激による単収縮を軽度抑制した。また, T-3761の300~1,000mg/kg経口投与でラット後肢Carrageenin浮腫の軽度増強が認められた。
    T-3761には, 以上述べたような薬理作用が認められたが, これらの作用はほとんどが高用量で発現し, いずれも軽度か一過性のものであった。
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