各種実験動物におけるT-3761の経口投与時の吸収・分布・代謝および排泄について検討した結果, 以下の成績を得た。
1. 各種動物にT-3761 5mg/kgを絶食下経口投与した時の最高血中濃度は, ラット>イヌ>マウス>ウサギの順に高く, ウサギを除いた各種動物におけるBioavailabilityは90%以上であった。マウス, ラットにおける本剤の血中からの消失はOfloxacin (OFLX), Ciprofloxacin (CPFX) より速やかであったが, 最高血中濃度は両剤より高かった。
2. 本剤のラット組織内濃度は, OFLXとほぼ同程度であったが, 血清比はOFLXより低値を示した。
3. 絶食時投与24時間後までの活性体の尿中排泄率は, マウスで27.3%, ラットで63.1%, ウサギで41.0%, イヌで63.3%であった。また, 尿中には未変化体以外の活性代謝物は認められなかった。ラットでは, 投与後速やかに尿中に排泄され, 投与2時間まではOFLXよりも高い尿中濃度を示した。
4. 絶食時投与24時間後までの活性体の胆汁中排泄率は, マウスで2.9%, ラットで1.5%であった。
5. 本剤のラットでの経口吸収は, 雌雄および週令で大きな差はなかったが, 食事の影響がわずかに認められ, 血中濃度, 尿中排泄率が低下した。また, 連続投与によって血中濃度推移, 尿中排泄, 組織内濃度に変化はなく, 蓄積性も認められなかった。
6. D-ガラクトサミンで作製した肝障害ラットにおける血中濃度および尿中排泄率は正常ラットに比べやや高値を示した。一方, 塩化第二水銀で作製した腎障害ラットにおける血中濃度推移は正常ラットに比べ有意に高く持続的であり, 尿中排泄率は低値を示した。
以上, T-3761は他のキノロン剤に比べ血中半減期が短かく, 組織への移行性は若干低いが, 良好な経口吸収性および高い最高血中濃度を示し, 他のキノロン剤と異なるユニークな体内動態を示した。
T-376lは富山化学工業 (株) 綜合研究所で新しく開発されたニューキノロン系合成抗菌剤 (Fig.1) で, ベンゾオキサジン環の10位に炭素一炭素結合を介して種々の置換基を導入した多くの化合物の中から抗菌活性, 体内動態, 安全性に優れる化合物として選択された1-5)。
本剤は緑膿菌を含むグラム陰性菌をはじめ, グラム陽性菌, 嫌気性菌に対し広範囲な抗菌スペクトルと強い抗菌活性を示す6, 7)。また, 各種実験的感染症に対しても優れた治療効果を示し8-11), 現在, 富山化学工業 (株) と (株) ミドリ十字の両社によって臨床開発が進められている。今回, T-3761の体内動態における特徴を明らかにする目的で, 各種動物における本剤の経口投与時の吸収・分布・代謝および排泄をBioassay法にて検討したのでその成績を報告する。
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