The Japanese Journal of Antibiotics
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化学療法剤耐性の白血病株に対するベスタチンの増殖抑制作用
藤井 秀二吉澤 啓子丸山 佐起子安部 史紀
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1996 年 49 巻 12 号 p. 1109-1115

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抄録

Ubenimex (Bestatin, Ubx) は抗腫瘍作用及び免疫調節作用を有し, 宿主介在性の抗腫瘍剤として成人急性非リンパ性白血病(AML)の完全寛解後に維持強化療法剤と併用して用いられている。AMLの一般的な治療はDaunomycin (DNR), Arabinosylcytosine (Ara-C), 6-Mercaptopurine (6-MP) などの化学療法剤を用いたDCMP療法である。臨床においてUbxはこれらの薬剤と併用しており, これらの化学療法剤の作用にUbxが直接的に影響を与える可能性がある。
また, 残存白血病細胞が出現する原因の一つに化学療法剤に対する耐性化が関与していると考えられる。そこで, DNR, Ara-C, 6-MPなどの化学療法剤とUbxとの併用効果を骨髄性白血病株K562及び同化学療法剤耐性株を用いてUbxの直接効果及び化学療法剤とUbxとの併用効果を検討した。Ubxは親株及び3種類の化学療法剤耐性株いずれに対しても増殖抑制効果を示した。K562親株においてDNRとUbxの併用により相乗効果を認め, その作用はコロニー形成法によっても確認された。Ara-C又はEtoposideとのUbxの併用効果は, 親株及び各種耐性株で相加的であり, 相互作用はないものと考えられた。6-MPは, Ubxと併用してもいずれの耐性細胞株においても相加以上の効果は認められなかったものの, 単剤の効果よりも強い抑制効果がみられた。以上の結果より, Ubxはこれまで報告されてきた免疫調節作用に加えて直接的に白血病細胞に作用し, 更に化学療法剤と併用することにより相加的ないしはそれより強い増殖抑制効果を示すことが明らかになった。

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