1996 年 49 巻 2 号 p. 107-143
我々は1981年以来全国各地の病院・研究施設と共同で呼吸器感染症分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~8) 。今回は, 1993年度の調査結果を報告する。1993年10月~1994年9月の問に全国20施設において, 呼吸器感染症患者473例から採取された検体を対象とした。それらの検体 (主として喀疾) から分離され, 起炎菌と推定された細菌は584株であった。このうち, MICの測定できた菌株数は580株であった。その内訳はStaphylococcus aureusg1株, Streptococcus pneumoniae98株, Haemophilus influenzae122株, Pseudomonasaeruginosa (non-mucoid) 91株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid) 34株, Moraxella subgenus Hranhamella catarrhalis42株, Klebsiella pneumoniae25株, Escherichia coli6株などであった。
主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, H.influenzaeについては前年とほぼ同様の成績を示し, P.aeruginosaについても大きな変動は見られなかったが, Saureus, K.pmumoniaeとM (B.) catarrhalisおについてはやや変動が認あられた。S.aumsではMPIPCのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S.aums) が51株, 56.0%を占めたが, これは1992年度に比べるとやや少ないように思われる。
また, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。
患者背景については, 年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上が61.3%を占め, 高齢者の割合は前年とほぼ同程度であった。疾患別の頻度では, 慢性気管支炎, 細菌性肺炎がそれぞれ31.196, 26.0%と多く, 以下気管支拡張症, DPBの順であった。
疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 慢性気管支炎ではS.pneumoniae23.2%, H.influenzae22: 2%, Pamginosa16.7%, 細菌性肺炎ではP.amginosa21.0%, S.aums519.8%, 気管支拡張症ではPamginosa43.8%, S.aureus19.3%, DPBではP.aeruginosa48.6%, H.influenzm25.7%が上位を占めた。
抗菌薬の投与の有無, 投与日数ごとにみた分離菌についてみると, 投与前に分離頻度が多い菌はH.influmm24.6%, S.pneumoniae19.5%である。一方, 投与前に14.7%を占めたS.aums17.296を占めたPamginosaでは逆に投与後の分離頻度が高く, S.aureusが17.996, Pamginosaが30.5%を占めた。この傾向は1992年度と同様の結果であった。因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は「有り」で66.7%, 「無し」で26.9%となり, 因子・手術の有りの例でMRSAの分離頻度が高い傾向を示した。抗菌薬の投与前後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で44.8%, 「投与後」で73.5%となり, 抗菌薬投与後で明らかに高値を示した。