The Japanese Journal of Antibiotics
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慢性腎不全患者における Ciarithromycin の血漿蛋白結合に関する研究
黒山 政一本橋 茂熊野 和雄矢後 和夫
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1996 年 49 巻 3 号 p. 256-263

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抄録

代表的なマクロライド系抗生物質であるClarithromycin (CAM) の蛋白結合率を健常人および非透析 (保存期), HD施行, CAPD施行の慢性腎不全患者の血清を用いて平衡透析法により検討した。
CAMの蛋白結合率は, 健常人では81.9±1.9%, 保存期患者では85.9±3.6%, HD施行患者 (透析開始直前) では82.9±3.3%, CAPD施行患者では86.8±3.3%であり, 著しい変動は認められなかった。一方, 血液透析前後の検討においては, 透析開始直前で82.9±3.3%, 透析終了直後で68.8±3.5%であり, 有意な差が認められた。
アルブミン濃度を一定にしたプール血清を用いた検討において, 透析終了直後のHD施行患者プール血清の蛋白結合率が明らかに低下していた。健常人プール血清およびパルミチン酸を添加した健常人プール血清を用いた検討では,蛋白結合率に殆ど変化は認められなかった。
このことより, 透析終了直後のHD施行患者の蛋白結合率低下の要因として, NEFA (パルミチン酸) 以外の結合阻害物質の増加あるいは何らかの要因によるアルブミンの立体構造の変化などが関与しているものと思われた。
HD施行患者へのCAMの投与に際しては, このような蛋白結合率の低下による薬理効果の増強. 副作用発現率の増加の可能性にも十分注意すべきであろう。

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