1998 年 51 巻 5 号 p. 305-318
新しく開発されたTazobactam/Piperacillin (TAZ/PIPC, YP-14) を親権者に対するinformedconsentが得られた14例の小児科領域感染症に使用し, 臨床的検討を行った。このうち3症例について吸収排泄試験を行った。一回50mg/kgを標準として, 1日3~4回静注または点滴静注により投与した。年齢は1ヶ月~15歳3ヶ月, 疾患構成は, 肺炎9例, 尿路感染症3例, 中耳炎, 左仙腸骨関節炎+敗血症各1例であった。肺炎2例を除く12例について効果を検討した。分離菌は8例において9株検出され, β-ラクタマーゼ陽性株は5株であった。肺炎7症例で著効4例, 有効3例で, 有効率100%となった。肺炎以外の症例では, 全て起炎菌が検出され, 有効率100%となった。起炎菌検出例は7例で3例がグラム陽性菌感染, 6例がグラム陰性菌感染であった。β-ラクタマーゼ産生株を含めた全ての菌種について消失効果が認められ, 消失率100%となった。TAZ/PIPCはβ-ラクタマーゼ産生グラム陰性菌, 特にB.catarrhalis (症例6), E.coli (症例12) においてPIPCより強い抗菌力が示された。副作用は症例10および14で認められた。それぞれ軽度の下痢, 軽度の背部異常感・悪心が見られた。臨床検査値の異常は2例認められた。それぞれGPT値軽度上昇, 好酸球・血小板増多で一過性であった。薬物動態の検討は本剤を50mg/kg静注または点滴静注にて行われた。TAZ, PIPC, PIPCの代謝産物であるDesethyl Piperacillin (DEt-PIPC) のCmax, AUC, およびT1/2はそれぞれ成人における動態と同様な傾向を示した。血中におけるTAZ/PIPC濃度比は1: 2.6~4.7の範囲となった。累積尿中回収率も同様な傾向を示した。