新規β-lactamase阻害剤Tazobactam (TAZ) とPiperacillin (PIPC) との1: 4の配合剤であるTAZ/PIPCについて, 小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行った。
1. 小児2例 (6~7歳) にTAZ/PIPC 50mg/kgをone shot静注した際の血中濃度並びに尿中排泄を検討した。
TAZの血清中濃度は0.08時間で, 50.8~51.0μg/mlで以後0.38~0.45時間の半減期で漸減し, 2時間で1.0~1.4μg/ml, 3時間, 6時間後に検出限界以下であった。PIPCの血清中濃度は0.08時間で167.0~231.0μg/mlで以後0.41~0.55時間の半減期で漸減し, 3時間で1.2~2.4μg/ml, 6時間後に検出限界以下であった。血清中わずかにPIPCの代謝物Desethylpiperacillin (DEt-PIPC) が認められた。TAZ対PIPCはほぼ1: 4の比率で血中濃度推移を示した。
一方, 投与後6時間までの尿中回収率はTAZでは33.5~90.1%, PIPCでは41.9~77.8%, DEt-PIPCでは1.5~2.8%であった。
2. 小児期感染症27例 (2ケ月~11歳) に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。尚, 1回の投与量は26.2~55.6mg/kg, 1日の投与回数は3~4回, 投与日数は31/3~71/3日, 総投与量は4.5~33.75gであった。
臨床効果の判定対象となった26例において急性化膿性扁桃炎1例, 急性中耳炎1例はいずれも有効, 急性副鼻腔炎1例は著効, 急性気管支炎3例は著効2例, 有効1例, 急性肺炎15例は著効13例, 有効2例, 急性尿路感染症2例は著効2例, 急性腸炎1例, 急性虫垂炎1例, リンパ節炎1例はいずれも著効で全例有効以上の成績が得られた。又, 原因菌と推定された
Streptococcus pneumoniae 4株,
Haemophilus influenzae 3株 (うちβ-lactamase産生株2株),
Moraxella (Branhamella) catarrhalis 2株 (2株ともβ-lactamase産生株),
Morganella morganii 1株 (β-lactamase産生株) は全て消失と判定された。
副作用は1例に軽度の下痢が認められた。臨床検査値異常として白血球の減少1例, GOT・GPT上昇2例, 好酸球の増多1例が認められた。
以上の成績より, 本剤は小児期感染症において高い有効性が期待でき, 安全に投与できる薬剤であると考えられた。
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