The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるTazobactam/piperacillinの基礎的・臨床的検討
本廣 孝長井 健祐山田 秀二沖 眞一郎山田 孝吉永 陽一郎津村 直幹織田 慶子阪田 保隆加藤 裕久今井 昌一森田 潤松尾 勇作池澤 滋高橋 耕一福田 毅山下 康博荒巻 雅史林 真夫山川 良一小野 栄一郎棚成 嘉文堤 隆博宝珠山 厚生松田 健太郎松行 真門安藤 寛末吉 圭子橋本 信男久保田 薫川上 晃樋口 恵美安藤 浩子平田 知滋衛藤 元寿安藤 昭和坂口 美奈子石井 正浩主計 武代久田 直樹山村 純一堀川 瑞穂富永 薫佐々木 宏和垣迫 三夫半田 祥一藤本 保元山 浩貴小森 啓範間 克麿
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1998 年 51 巻 6 号 p. 413-431

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抄録

新しく開発されたβ-lactamase阻害剤であるTazobactam (TAZ) とPenicillin系抗生物質であるPiperacillin (PIPC) の力価配合比が1: 4のTAZ/PIPCについて, 保存株と臨床分離株に対する薬剤感受性試験を行うと共に, 本剤の注射剤を小児の種々の感染症に投与し, 有効性及び安全性を検討したところ, 次のような成績が得られた。
1. 薬剤感受性試験では保存菌株4菌種ll4株に対しTAZ/PIPCとPIPC, Penicillin G (PCG), Ampicillin (ABPC), Cefotiam (CTM), Cefotaxime (CTX), Ceftazidime (CAZ), Sulbactam (SBT) /Cefoperazone (CPZ) の8薬剤を, またTAZ/PIPCの投与症例から分離された3菌種中Staphylococcus aureus (S.aureus) にはTAZ/PIPC, PIPC, Methicillin (DMPPC), CTM, CTX, SBT/CPZの6薬剤, 他の2菌種に対してはこれらの6薬剤中DMPPCを除く5薬剤を用いて, 接種菌量106CFU/mlにおけるMICを測定した。
保存菌株中グラム陽性球菌のStreptococcus pyogenes (S.pyogenes) 45株に対するTAZ/PIPCのMIC90は0.05μg/mlで, PIPC, CTM, CAZ, SBT/CPZのMICと同じか類似の傾向にあり, Streptococcus agalactiae (S.agalactiae) 28株に対するTAZ/PIPCのMICは全株が0.39μg/mlで, PIPC, CTM, CAZ, SBT/CPZのMICと同じか類似した。グラム陰性桿菌中Bordetella pertussis (B.pertussis) 10株に対するTAZ/PIPCのMIC90は0.10μg/mlで, PIPCのMICと同じか類似し, Haemophilus influenzae (H.influenzae) 31株に対するTAZ/PIPCのMIC90は0.05μg/mlで, PIPC, CTX, SBT/CPZのMICと同じか類似した。TAZ/PIPCの投与症例から分離されたグラム陽性球菌中S.aureus 2株では1株がβ-lactamase非産生菌, 1株が低産生菌で, MICは各々0.78, 3.13μg/mlを示し, 前者ではPIPC, DMPPC, CTM, CTX, 後者ではPIPC, DMPPC, CTX, SBT/CPZのMICと同じか類似した。Streptococcus pneumoniae (S.pneumoniae) 4株に対するTAZ/PIPCのMICは各2株が0.05μg/mlか1.56μg/mlで, PIPC, SBT/CPZのMICと同じか類似した。グラム陰性桿菌のH.influenzae 7株では, 6株がβ-lactamase非産生菌, 1株が高度産生菌で, 前者に対するTAZ/PIPCのMICは5株が≤0.025μg/ml, 1株が0.39μg/mlで, PIPC, SBT/CPZのMICと同じか類似し, 後者の1株に対するTAZ/PIPCのMICは0.78μg/mlで, SBT/CPZのMICに類似し, PIPCのMICより小であった。
2. 臨床効果は7疾患33例中著効17例51.5%, 有効14例42.4%, やや有効2例6.1%で, 無効例はなく, 有効以上の有効率は93.9%であった。
3. 細菌学的効果は4菌種17株で判定でき, 全株が消失した。
4. 副作用は臨床効果の判定できた33例と脱落症例2例, 計35症例について検討でき, 4例11.4%に下痢が出現した。
5. 臨床検査値は末梢値の検査で血小板数の増多が32例中1例3.1%, 好酸球増多は29例中2例6.9%に出現した。血液生化学検査では21例中GPTの単独, GOTとGPTの同時異常上昇が各1例に出現した。

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