The Japanese Journal of Antibiotics
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造血器腫瘍に併発した感染症に対するCefozopran (CZOP) の臨床的検討
笹井 ゆり岩井 俊樹田村 明子中澤 直三植田 豊兼子 裕人堀池 重夫横田 昇平谷脇 雅史加嶋 敬三澤 信一津田 昌一郎大川原 康夫
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1998 年 51 巻 8 号 p. 501-508

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抄録

造血器腫瘍に併発した感染症に対し, cefozopran (CZOP) 単独による初期治療を行い, その有効性と安全性を検討した。38度以上の発熱を伴い, 臨床的に細菌感染症が疑われた55症例のうち51例を対象とし, CZOP49を1日2回にわけて点滴静注投与した。
基礎疾患はacute myelogenous leukemia (AML) 9例, acute lymphogenous leukemia (ALL) 8例, aplastic anemia (AA) 2例, adult T cell leukemia/lymphoma (ATLL) 2例, non Hodgkinlymphoma (NHL) 28例, multiple myeloma (MM) 2例であった。感染症として7例に敗血症, 32例に敗血症疑い, 6例に気管支炎, 5例に肺炎, 1例に急性腹膜炎を認めた。臨床効果は著効を14例, 有効を15例, やや有効を3例, 無効19例に認め, 全体の有効率としては57%であった。基礎疾患別の臨床効果ではAML, ALL, AA, ATLL, NHL, MMでそれぞれ56%, 63%, 100%, 50%, 50%, 100%の有効率を認めた。感染症別臨床効果は敗血症で14%, 敗血症疑いで63%, 気管支炎で100%, 肺炎で40%, 急性腹膜炎で0%の有効率を認めた。顆粒球数別臨床効果では治療中にわたり500/μl以下の群では53% (9/17) の有効性を認めた。5人の敗血症を含む6人の患者の血液, 喀痰より6株の細菌と1株の真菌を検出した。治療により2株の細菌は消失し, 1株は菌交代現象を起こした。副作用としては肝機能障害を10例, 貧血を1例, 蛋白尿を1例, 間接型ビリルビン上昇を1例, 血小板減少を2例, 好酸球増多を1例に認めた。いずれも重篤なものはなく使用中止後すみやかに消失した。
今回, 我々は, 感染症, 基礎疾患, 基礎疾患に対する治療方法, 顆粒球数により患者の重篤度をスコアー化し, CZOPの有用性を更に検討した。このスコア一化にて患者群を重症, 中等度, 軽症に分類した。CZOPは軽症と中等度の群に有効性を示した。この結果よりCZOPによる初期治療は造血器腫瘍併発感染症の軽症や中等度の群に有用であることが示された。

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