抄録
1998年6月から翌年5月までの間に全国9施設において尿路感染症と診断された449症例から分離された591菌株を供試し, それらの患者背景について性別・年齢別と感染症, 年齢別感染症別菌分離頻度, 感染症と菌種, 抗菌薬投与時期別の菌と感染症, 因子・手術の有無別の菌と感染症などにつき検討した。
年齢と性および感染症の関連についてみると, 男性の症例は50歳未満が少なく, 感染症ではカテーテル非留置複雑性尿路感染症が最も多かった。女性では20歳未満の症例が少なく, 単純性尿路感染症が最も多かった。分離菌を感染症別年齢別にみると単純性尿路感染症ではEscherichia coliが最も多く分離され, 年齢別ではEnterococcus faecalis, Proteus spp., Klebsiella spp.が加齢に伴い増加した。複雑性尿路感染症ではカテーテル留置, 非留置に関わらず, 年齢による菌分布に違いはなかった。E.coliは感染症が複雑になるに従い減少し, Proteus spp., Pseudomonas aeruginosa, Staphylococcus aureusは増加した。抗菌薬投与前後の感染症別菌分布については, 例年, 単純性尿路感染症で投与後における分離菌株数が投与前に比べかなり少ないが, 1998年は投与後での分離株数が増加した。因子・手術の有無別, 感染症別に分離菌をみると, 単純性およびカテーテル非留置複雑性尿路感染症ではE.coliは無で多く分離され, E.faecalisは有で多く分離された。カテーテル留置複雑性尿路感染症では因子・手術の有無による分離菌分布に違いはなかった。