The Japanese Journal of Antibiotics
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呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について (1998年)
池本 秀雄森 健猪狩 淳小栗 豊子寺井 継男井上 洋西中舘 俊英伊藤 忠一吉田 武志大野 勲岡田 信司荒川 正昭下条 文武五十嵐 謙一岡田 正彦尾崎 京子青木 信樹北村 亘子関根 理鈴木 康稔柄沢 安雄中田 紘一郎中谷 龍王稲川 裕子工藤 宏一郎小林 信之近藤 正小林 宏行河合 伸高安 聡島田 馨中野 邦夫横内 弘伊藤 章住友 みどり松島 敏春二木 芳人安藤 正幸菅 守隆佐藤 圭創戸坂 雅一河野 茂朝野 和典宮崎 義継泉川 公一山口 敏行餅田 親子那須 勝永井 寛之山崎 透中野 忠男
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2000 年 53 巻 5 号 p. 261-298

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抄録

1998年10月~1999年9月の間に全国16施設において, 下気道感染症患者438例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性及び患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌532株のうち517株について感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcus aureus85株, Streptococcus pneumoniae100株, Haemophilus influenzae 96株, Pseudomonas aeruginosa (non-mucoid株) 75株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid株) 6株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis 38株, Klebsiella pneumoniae 26株などであった。
S. aureus 85株のうちOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus: MRSA) は60.0%を占めた。これらMRSAに対してVancomycinとArbekacinは強い抗菌力を示したが, ABKに対してMICが64μg/mlを示す耐性株が1株検出され, またVCMでも感受性株の減少が認められた。ペニシリンに低感受性を示す株 (Penicillin-intermediate S. pneumoniae: PISP+Penicillin-resistant S. pneumoniae: PRSP) の分離頻度は前年の30.9%から46.0%に増加したが, PRSPは減少しておりPISPが19.8%から39.0%に2倍近く増加した。S. pneumoniaeに対してはPanipenem, Imipenem, Faropenemの抗菌力が強くMIC80はいずれも0.125μg/ml以下であった。H. influenzaeM.(B.) catarrhalisは, 一部の薬剤を除き全般的に良好な感受性を示した。1997年に認められたこれらの菌のCeftazidimeに対する感受性の低下は1998年に回復した。P. aeruginosaに対してはムコイド産性株の6株を含めTobramycinの抗菌力が最も強かった。K. pneumoniaeはAmpicillinを除く各薬剤に対して良好な感受性を示したが, 1997年の成績と比較すると若干低感受性株が多くみられた。
患者背景については, 年齢別の分布では80歳以上の症例が増加し, 70歳以上の高齢者は48.6%とほぼ半数を占めた。疾患別の頻度では細菌性肺炎が40.2%であり, 経年的に緩やかな増加傾向がみられ、特に症例数の多い70歳以上では1997年までに比べ約10%増加した。次に多いのが慢性気管支炎の27.6%であるが, 経年的には徐々に減少している。これら感染症からの抗菌薬投与前後における分離菌株数をみると, 慢性気管支炎では抗菌薬の投与により分離株数が半数以下に減少するが, 細菌性肺炎では投与前後での分離株数はほぼ同数であった。抗菌薬の投与の有無, 投与日数ごとの分離菌については, 投与前に多く分離された菌はS. pneumoniae26.7%, H. influenzae 23.8%, S. aureus 13.3%, M.(B.) catarrhalis 10.8%などであった。S. aureusは投与15日以上で減少したが, P. aeruginosaは薬剤投与により減少することはなく, 15日以上では45.5%分離された。S. pneumoniaeは投与により減少し, 15日以上では4.5%のみであったが, H. influenzaeは14日以内では4.8%まで減少するものの, 15日以上では25.0%と多く分離された。

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