The Japanese Journal of Antibiotics
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深在性真菌症の発生動向に関するアンケート調査アスペルギルス症について
上原 至雅亀井 克彦菊池 賢槙村 浩一鈴木 和男新見 昌一上 昌広馬場 基男堀田 国元渋谷 和俊直江 史郎
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2002 年 55 巻 4 号 p. 446-481

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抄録

わが国の深在性真菌症の発生動向に関する研究の一環として、平成12年度の深在性真菌症に対する意識調査に引き続き、今年度は臨床現場ではアスペルギルス症にどう対応しどのような問題を抱えているのかなどについて感染症担当医を対象に調査するとともに、アスペルギルス症の発生動向について調べた。前回と同様に全国の概ね500床以上の一般病院508施設にアンケートを依頼し、143施設163名の医師から回答が寄せられた。それらを要約すると、(1) 3/4以上の医師が、本症の診断が極めて困難であり効果的な治療薬がないことを指摘した。(2) 経験した疾患については肺アスペルギローマ、ついで侵襲性肺アスペルギルス症が多かった。(3) 播種性アスペルギルス症の肺以外の感染臓器は、肝、脳、腎、心の順に高かった。(4) アスペルギルス症の診断基準については、胸部X線などの画像、鏡検、血清検査、培養などを用いていた。一方で診断基準の数が7-8種類と多く、本症の診断の困難さを表していた。(5) 治療にはアムホテリシンBとイトラコナゾールが用いられた。しかし、本症の診断がっかないためか有効性が乏しいフルコナゾールの使用例もかなりあった。アスペルギルス属菌は臨床的には重要であるにもかかわらず、菌の検出率は高くなく2-3/1000呼吸器検体程度であった。A.fumllgatusが最もよく分離され、過去5年間で漸増傾向を示していた。今回のアンケート回答者は前回に比較して少なかったが、本症に関する調査が回答者にとって答えにくい難しい作業であったことを物語っている。以上のことからアスペルギルス症の特異的診断法の開発と副作用のない新しい殺菌性抗真菌剤の開発研究が必須である。

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