The Japanese Journal of Antibiotics
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術後感染防止のための抗菌薬選択
品川 長夫
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2004 年 57 巻 1 号 p. 11-32

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抄録

術後感染症の防止を目的とした周術期抗菌薬投与は外科系各科において広く実施されているが, 我が国では欧米と異なって, 偽薬をおいた二重盲検試験もなく, 術後感染症のサーベイランスも不十分なため, 説得力のある学問的根拠が少ない.また, 予防投与は保険適用が必要であると指摘されながらも未だに実現していない. 日本独自のガイドラインを作成するにはエビデンスの蓄積が必要である. 周術期抗菌薬投与についての考え方としては, 術後感染症の分類と術野の汚染度による手術の分類を踏まえ, 手術の対象臓器ごとに可能性の高い術野汚染菌に対して有効な抗菌薬を選択し, 手術に応じた投与方法をすべきである. 術後感染予防薬の選択には, 感受性・耐性率, 血中濃度・尿中排泄・体液・組織移行, 副作用などを勘案する.第一・第二世代セフェム系薬や, セファマイシン系薬が候補となるが, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) やpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniae (PRSP) を初めとする耐性菌対策としては多種抗菌薬を考えねばならない.耐性菌対策の一つとして, ペニシリン系薬 (合剤を含む), セフェム系薬 (セファマイシン系薬も含める), ホスホマイシン系薬を3つの柱としてサイクリックに使用することも考慮すべきであろう. 現時点で, 術後感染防止に関する抗菌薬の役割についてのエビデンスは, 十分とはいえない. 医療経済性も考慮し, 批判に耐えるプロトコールでの臨床比較試験が望まれる.

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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