抄録
著者の1人大川の哺乳類小脳核の比較解剖学的研究に続く1連の研究として我々は鳥類小脳核の比較解剖学的研究をなした.
材料として鶏, 梟, 鳩, 鴎, 雀, 鶯及び鳥脳の前額断連続切片の Pal-カルミン染色標本を用いた.
鳥類小脳核は夫々の融合が著明な為厳密に区別する事は困難であるが, 外側核, 中位核, 内側核の3核を区別し得, 中位核が更に2亜核に分れる事はない. 尾側に於いて外, 中両核は融合し本融合体は同時に前庭神経核とも著明な融合を示す. 哺乳類では単孔類以外, 外側核が前庭神経核と融合を示す事はないが, 鳥類では全材料動物で之が見られるのが特有である. 頭側に於いて外側核消失後は中位核と新しく現れて来た内側核とが又1塊をなして融合する.
小脳核の発達度合を見る為に核の最大断面積を Abbe 氏描画装置及び複式補整プラニメーターを用いて計測し, 又同様にして室頂に於ける小脳半側の面積をも計測して対比した. 核の融合が甚しい為正確な計測は不可能で, 大凡の傾向を知り得る程度であるが, 全材料動物を通じ其比は大体哺乳類の単孔類に近い値を示し, 他動物のそれよりは発達良好と云える.
大川が哺乳類小脳核研究で詳論した様な論拠から我々は鳥類の外側核は機能的に主に哺乳類に於ける前中位核の役割を演じ, 中位核は主に哺乳類の後中位核, 内側核は内側核としての役割を演ずるもので, 更に前庭神経核との関連から鳥類では全小脳核が平衡感覚に関係するものと考える.