抄録
ラッテの顎下腺と舌下腺を外科的に全摘出して10日, 20日, 30日間飼育し, 体重, 血中ヒスタミン, 胃粘膜組織を観察して, 耳下腺のみを全摘出して同一期間飼育した先人の成績と比較した.
1. 体重は平均して次第に増加し, 耳下腺摘出例とは逆である.
2. 血中ヒスタミンは給食後11/2時間までは正常例よりも低い値を示し, 2-3時間を経て始めてやや高い値となる. 全般を通じて異常に高い値を示した耳下腺摘出例とは著しく相違する. これから耳下腺唾液の抗ヒスタミン作用 (藤江) が立証されるとともに顎下腺, 舌下腺唾液にはこの作用が殆んどないことが知られる.
3. 胃粘膜組織の病的変化は, 耳下腺摘出の場合と比較すると, 全般に軽度乃至甚だ軽度であるが, 顎下腺と舌下腺摘出によって特に顕著に現われる若干の病変があることが知られ, また耳下腺摘出の場合と殆ど共通する病変も1-2あることが認められた. 依って耳下腺唾液と顎下腺唾液との間には抗ヒスタミン作用の他にも何か作用的差異の存することが推察される.