Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
正常ラット胃粘膜の電子顕微鏡的研究
黒住 一昌柴崎 晋内田 源次田中 愛雄
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1958 年 15 巻 4 号 p. 587-624

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抄録
1% OsO4で固定した正常ラットの腺胃粘膜を電子顕微鏡で観察した.
1. 胃腺主細胞は豊富な rough surfaced endoplasmic reticulum (ERと略) と明調な分泌顆粒及び分泌空胞の存在によって同定し得る. これらの間には移行性があるように思われる. 核上部には典型的な Golgi 装置が認められ, 糸状の糸粒体は細胞の周辺部に多い.
2. 旁細胞はその位置, 細胞内分泌細管の存在と多数の大形糸粒体によって同定可能である. 所謂 oxyntic granule は糸粒体に他ならず, これは比較的大形で, 非常に密に排列する cristae を有する. Rough surfaced のERは少く, 典型的な Golgi 装置は認められないが, smooth surfaced のERに属する多数の小胞を認める. 細胞内分泌細管は著明な microvilli を備えている. 腺腔に面する遊離面から巨大な突起を出すものを認め, この内部には糸粒体を認めず略々均質性で, アポクリン分泌を思わせる.
3. 副細胞は分泌顆粒の性状と核の不正形によって他の細胞型と区別し得る. 分泌顆粒の電子密度は主細胞のものより高く, 胃上皮細胞のものより低い. よく発達した Golgi 装置は屡々分泌顆粒の間に介在し, これに密着し, 又 Golgi 野の内部に分泌顆粒と略々同密度の小顆粒が含まれる. ERと糸粒体は細胞の周辺部に圧排されている.
4. 上記3種細胞に於て, 糸粒体の特異な態度が注目された. 即ち閉鎖堤よりやや下方で細胞境界の形質膜がやや厚くなり, ここに極めて屡々糸粒体が附着している.
5. 好銀性 (基底明調) 細胞は微細な特殊顆粒を含み, 屡々脂肪滴を有する. この細胞の糸粒体は非常に繊細で, ERと Golgi 装置の発達は悪い.
6. 胃上皮細胞は細胞先端部に, 電子密度の高い, やや不正形の分泌顆粒を含み, Golgi 装置の発達が良好である. 分泌顆粒の幼若型と思われるものを Golgi 野内に多数認める. ERは比較的乏しいが, 所謂RNA粒子は非常に多い. この細胞では細胞膜の皺襞形成が著明である.
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© 国際組織細胞学会
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