Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
スッポンの睾丸, 精管, 膀胱及び尿道の組織と神経分布
大山 哲男
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1959 年 16 巻 1 号 p. 89-107

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抄録

ムササビの睾丸は腎の内側縁に存し, 曲精細管は直精細管を経て睾丸間膜内を末梢に進む第1輸精管に移る. 睾丸に対する固有神経は多くの植物線維と少量の知覚線維とから成り, 前者は終網となって睾丸実質内に広く拡散する. 後者知覚線維は哺乳動物に於けると異って睾丸内の幅広い管間結合織内に波状又は係蹄状走行を示す終末線維から成る非分岐性終末に, 時には単純な分岐性終末に終る.
第1輸精管は下降して腎の腹側を〓曲走行する第2輸精管に移る. 前者は1列性立方上皮から成る細管で不染性の結合織で包まれる. 後者の始部では上皮管が赤染性の紡錐状の線維細胞の輪状層で包まれる. 之に続く甚だ長い固有第2輸精管は広い管腔を有し, 1列性立方上皮の周りの輪状結合織細胞層も発達良好, 更にその周りには縦走性の平滑筋層が見られ, 又その周囲の鬆疎結合織内には甚だ多数の専ら迷走性の細管の走るを見る.
第2輸精管周囲の鬆疎結合織内には神経叢の形成を見る. 之は多くの植物線維と少量の知覚線維とから成り, 又第1輸精管に向っても神経枝を分ける. 知覚終末は第1輸精管及び第2輸精管始部では稀に見られるに過ぎないが, 固有第2輸精管では末梢に進むに従って其数を増し, 非分岐性終末の外, 単純な分岐性終末から成る事もある. 殊に尿道に沿って走る迷走性細管を伴わない第2輸精管に於て然りである.
第2輸精管に続く射精管は肛門管の外側を降り, 遂には同管の背側部にある長い粘膜皺襞に開口する. 射精管は1列性円柱上皮, 固有膜及び縦走性平滑筋層から成る. 射精管の周囲には可なり多数の知覚線維が見られ, 之等は筋層の内外及び固有膜内に終末を作る. 終末は非分岐性及び単純性分岐性終末から成り, その終末枝は屡々複雑な走行を示す.
膀胱は3-4列性重層円柱上皮, 固有膜及び発達良好な筋層から成り, 周囲は漿膜で蔽われる. この膀胱は甚だ神経に富み, 各層内に神経叢の形成を見るが, 固有膜神経叢が特に強力で大きな神経節も所々に発見される. 又神経細胞にも著明な交感性多極性を示すものが多い. 植物線維は筋層内に著明な終網を作る. 知覚終末も各層内に, 特に筋層内に多数発見されるが, 之は太い線維に由来する非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされる. 固有膜にも同様な終末を見るが, 之は甚だ少量であり, 又上皮内に進むものは特に少い.
尿道は僅かの縦走性粘膜皺襞を有し, 重層円柱上皮, 狭い固有膜と内縦, 外輪の両層から成る筋層とで構成される. この尿道でも固有膜神経叢は発達強力, 中に小神経節を含む. 知覚線維は膀胱に於けるよりも多く, 之等は固有膜及び筋層内に終末を作る. 終末様式は膀胱の場合に類似するが, 唯この固有膜内には屡々稍々複雑な分岐性係蹄状終末の見られる事は甚だ特異的である.

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© 国際組織細胞学会
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