Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
赤腹〓〓の水晶体再生過程に於ける核酸並びに多糖類について
瀬戸口 孝夫
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1959 年 18 巻 3 号 p. 439-455

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抄録
成熟赤腹〓〓の水晶体摘出後, 水温24-28°Cの下に, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 18, 21, 35日間飼育したものを材料として, Feulgen 反応, メシルグリーン-ピロニン染色, PAS反応及び Bauer 反応を行い, 再生過程に於ける水晶体のDNA, RNA及び多糖類の状態を検索して次の結果を得た.
1. DNAは, 初期再生体では緻密な核網に一致して存在し, 高い反応を示すが, 線維細胞への分化過程では, 核網の粗大化, 反応の軽度の低下がみられ, 分化が更に進むと核濃縮より核融解を経て消失する. 他方, 上皮細胞では分化の進むにつれ核網の密度を増し, 反応もやゝ高くなる.
2. RNAは, 索状, 顆粒状の粒子により構成された網眼をなして細胞形質に出現し, 初期再生体では極めて濃度が高い. 線維細胞への分化過程では, 分化中の細胞の上端より基底に向って, 細胞の伸長につれて濃度が著明に低下する. 上皮細胞では尚かなり濃度が高いが, 21日以降では上皮, 線維ともに著明に低下する.
3. 多糖類は主としてグリコゲンよりなり, 初期再生体では痕蹟的に出現し, 時にグリコゲン顆粒をみる. 分化過程では, 隣接した細胞に広般にグリコゲンの増加がみられるが, 伸長した線維細胞では減少する. また第2次線維の分化過程でも, 分化の初期の細胞に一時的に増加がみられるが, その後は次第に減少する. 上皮細胞では後半期は次第に増加し, 末期にはかなり多量のグリコゲンの蓄積がみられる.
4. 以上の所見より, 水晶体再生過程に於ては, グリコゲンをエネルギー源として核酸の合成がおこなわれ, 核酸は蛋白質の合成に関与することが推察される.
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© 国際組織細胞学会
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