抄録
初生犬の舌背に於ける糸状乳頭は小さな背の低い円筒状のもので尚発達劣勢, 従ってその乳頭幹に進む知覚線維も極めて少く, その終末も非分岐性及び単純性分岐性終末として上皮下に形成されるに過ぎず, 上皮内線維や小体様終末の如きは証明されない. 然し幹線維は稀ならず太い線維から成り, その終末枝は著明な太さの変化と迂曲走行とを示す.
茸状乳頭はその口腔面の上皮内に屡々味蕾を含む. 乳頭幹に対し一般に1条の太い神経束が入り, 神経線維は上皮に対し扇状に拡散する. その中の植物線維は終網となって乳頭幹内に広く拡がる. 知覚線維は上皮下に非分岐性及び単純性分岐性終末となって終る. 後者は糸状乳頭に見られるものに比し稍々複雑に構成される. 尚この乳頭では上皮内線維も見られるが, その発達は尚甚だ劣勢, 一般に非分岐性のものである. この部の味蕾に対する知覚線維の発達も劣勢, 何等知覚線維を受けない味蕾も所々に発見される.
葉状乳頭は良好な発達を示し, 溝に面する上皮には勿論, 口腔面の上皮にも多量の味蕾を含む. 有廓乳頭は数も少く規模も小さいが, 口腔面の上皮にも味蕾が証明される. 然し溝に面する上皮及びその対岸の上皮内に見られる味蕾と共にその数は甚だ少ない. 以上両乳頭の基底部には Remak 氏半神経節細胞所有の神経叢の形成を見る. 之に由来する少量の知覚線維と多量の植物線維とは乳頭幹内に拡散, 後者は発達良好な終網に終る. 前者知覚線維は上皮下に単純性分岐性終末として終り, 複雑性のものは末だ形成されていない. 尚知覚終末は味蕾直下に形成される事が甚だ多く, その終末枝は蕾内及び蕾外線維に移行する事が屡々である.
初生犬の舌下面は表面平滑な背の低い重層扁平上皮で蔽われ, 固有膜からの乳頭形成は甚だ弱い. 然し稍々大きな乳頭は正中線附近に認められる. 尚小さな縦走の1-2粘膜皺襞の形成を見る.
舌下面では固有膜神経叢の発達は甚だ劣勢, 従って之に由来する知覚線維の数も僅少, その終末は非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされる. この終末の発達は乳頭の発達に平行, その終末枝は余り太さの変化も迂曲走行も表わさず, 上皮下に尖鋭状に終る. 但しこの終末枝が稀ならず上皮内線維に移行する事は興味深い.