抄録
人, 犬及び猫を用いて下垂体門脈系血管, 特にその壁に出現して血流方向の調節に与かると考えられる装置を, 組織学的に検索すると同時に, その出現部位を明らかにし, 下垂体内における血行の状態を検討した.
下垂体を栄養する血管の壁には, 1. 膨化した立方状の内皮細胞, 2. 上皮細胞様筋細胞, 3. 高度に発達した平滑筋 (Sperrgürtel), 4. 螺旋弁 (Spiralklappen), 5. 念珠状静脈 (Drosselvenen) 及び動静脈吻合など, 種々の血流調節装置が認められた. これらの諸装置は上下垂体動脈から Mantelplexus, 漏斗の血管係蹄, 下垂体門静脈, 前葉の血管を経て下垂体被膜の静脈に至る, 所謂下垂体門脈系血管の形成に与かる諸種の血管領域にみとめられるが, 夫々の出現部位とその部にあらわれる装置の種類は一定している. 両者の関係については図8, 及びその本文説明に詳述した.
以上の如き血流調節装置の分布から, 下垂体の血流量及び血行の方向が, 小領域ごとに局部的に, あるいはかなり広い領域に亘って調節されることが推測される. そして単独の, あるいはいくつかの血流調節装置の働きによって生ずる種々な血行, 及び血流量の変化の可能性を分析吟味することによって, はじめて視床下部と下垂体との間の複雑な機能的連絡を一層明確に把握することが出来る.