抄録
豚胃粘膜の可及的表層部をかき集めエーテル・アルコホル等量液に24時間浸して抽出を試み, その濾液に対して更にアルコホルによる再抽出を試みた. 斯くして得た抽出液についてその粗成, 作用を検し, 次の如き所見を得た.
1. ペーパークロマイトグラフ法 (溶媒としてn-ブタノール+醋酸+水及びブタノールでの10%アンモニア飽和溶液を用い, また発色にはニンヒドリン反応を用いた) によって分析すると, 抽出液中にはヒスタミン, ヒスチジン, チロジン, メチオニン, ロイシンが推定されうる.
2. 抽出液を空腹ラッテに皮下注射し胃腺主細胞, 胃粘膜表在細胞を観察すると, 胃腺主細胞には著しい分泌顆粒新生の活動が見られるが, 胃粘膜表在細胞には殆んど影響が現われない. これ等の効果は塩酸ヒスタミンを皮下注射した後に見られる効果に非常に近似している.
3. Magnus 法によりモルモット腸管に対する効果を検すると, 抽出液による腸管の収縮は10-6塩酸ヒスタミン溶液を用いた時の収縮と殆んど同じである.
以上の結果から胃粘膜表在細胞より分泌せられ胃腺主細胞の分泌顆粒新生を促進し而もイミダゾール核を有すると言われる胃壁ホルモン Productin (藤江) は粗成的には単純でなくヒスタミン, ヒスチジンの他に若干のアミノ酸を含んでいるらしいが, 作用的には殆んどヒスタミン単独の如くに思えるほどヒスタミンに相似することが知られる.