抄録
ホルマリンで灌流固定, オスミウム酸で後固定したネコの脳の外側視床枕核を観察し, とくにそのシナプス構成を詳しく検討した.
枕核ネウロンに対する形態学的な意味での入力 (シナプス入力) を示すと考えられる神経終末にa) 最も多い小型の終末で内に球形のシナプス小胞を含むもの. b) それにくらべやや大型の終末で内に円筒状シナプス小胞 (HIRATA 1966) をも含むもの, およびc) まれに見られる, かなり大型で, 内に多数の球形シナプス小胞を入れ, いわゆる苔状終末に似たもの, 以上3種を区別できる. これらの3種の終末の数の比は, 終末を無作意に約1,000個抽出すると, 外側枕核では一定の値 (a: 82.5%, b: 17%, c: 0.5%) を示し, 個体差が少い. これらの入力に対する枕核ネウロンの受容野は, 入力とのシナプス関係の形態の違いにより, 1) Glomerular synapse (MAJOROSSY et al. 1965) を形成する小枝で, 樹状突起幹より直接でるもの, 2) 近位樹状突起枝 (径1∼2μ) および3) 最も単純なシナプス関係をもつ, 遠位樹状突起枝 (径1μ以下) に分けることができる.
枕核に投射する皮質野を剔除すると, 電子顕微鏡では著朋な変性像を認めることはできなかったが, 上記の入力の構成比が変化し, とくにbの終末が減少することが知られた.