Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
走査型電子顕微鏡による発育乳歯エナメル質の構造
徳永 純一島村 昭辰
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1969 年 31 巻 2 号 p. 155-166

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抄録
ヒトの6∼8カ月胎児より摘出した歯胚を2.5%グルタールアルデハイドまたは10%中性ホルマリン液で固定し, 発育中の乳歯エナメル質の表面構造を走査型電子顕微鏡で観察した. 固定材料の一部はエナメル質表面から有機物を除くため1:2ヂアミノエタン処理を施した.
1. 発育エナメル質表面は小柱間質部の形成が小柱端の形成に先行することによって形づくられた陥凹の規則的配列として見られる. 陥凹の大きさ, 深さはエナメル質の発育段階によってことなる.
2. 未熟期の陥凹はより深く, 先細りの円柱形あるいはクサビ形を示す. 陥凹底面は粗造で, 径100mμほどの微粒子に被われている. 陥凹壁にはいろいろな長さの針状あるいは小柱状の構造物が付着している. また多くの陥凹は小球状顆粒と不定形塊状物を含んでいる. 有機溶剤処理の試料ではそれらの構造物のほとんどが消失してしまい, 代ってエナメル基質中の結晶構造が輪郭のはっきりとした薄片様形態として浮彫りされて見られる.
3. 電子プローブX線マイクロアナライザーによって, 未熟期の小柱端基質のカルシウム濃度が小柱間質部のものよりも, かなり高いことが示された.
4. 未熟と成熟エナメル質間の境界部にある陥凹は著しく浅くなり, 陥凹底もより平坦になっている.
5. 成熟エナメル質の表面には浅い陥凹もなく, 微細な起伏がみられるのみである.
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© 国際組織細胞学会
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