Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
ヘビの血液中の特異なコロイド粒子の出現とその毛細血管壁通過
毛細血管壁の物質透過性に関する新らしい仮説の提唱
小林 繁
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1970 年 31 巻 5 号 p. 511-528

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抄録

シマヘビ65ヒキの種々の器官を電子顕微鏡下に観察して, 約3割の個体の血中に従来記載のない特異なコロイド粒子を認めた. この粒子は高電子密度球型の小体で, 直径約20mμあり, 血液中と血管周囲の組織腔に分布していた.
毛細血管壁ではこの粒子は内皮細胞の膜構造物, 内皮下腔, 基底膜中にみられ, これらの所見はこの粒子の毛細血管壁通過を示すと解釈された.
この粒子は毛細血管壁の物質透過性の形態的研究に従来使われてきた標識物質と大きさはほぼ同じであるが, それ自身血液の生理学的構成要素である点で根本的にちがっていた.
本研究で, 毛細血管内皮はいわゆる窓のほか2つ以上の小胞がつながってできる細管により貫かれ, 血管腔と組織腔とはこれを通して結ばれていることが明らかになった. 窓の隔膜と同様の構造が小胞の開口部および2つの小胞の癒合部にもみられた. これらの隔膜はコロイド粒子の通過をさまたげるもので, 生理学者のいう“small pore system” はこの隔膜に含まれると考えられた. 隔膜がすべてとり去られた場合, 細管は巨大な粒子をも通過させ得る. PALADEらのいう“transport in quanta”は本研究で明らかにされた内皮細胞を貫く細管系による物質の流出よりも効率が低いと想像され, 毛細血管内皮の物質透過が“transport in quanta”とちがうことを強調するためにこの論文では細管系による物質の流出は“transport in continuum”と呼ばれた.
コロイド粒子は一般的には毛細血管の基底膜を通過するが腎糸球体ではこの膜は完全にこの粒子の通過を阻止していた.

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© 国際組織細胞学会
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