抄録
正常ならびにビタミンD2, CaCl2投与後のラットの甲状腺旁濾胞細胞と上皮小体細胞を電子顕微鏡により観察した.
1. 正常ラットの旁濾胞細胞には多数の直径100∼240mμの分泌顆粒が存在する. また, ときどき分泌顆粒を含んだ autophagic vacuoles も認められる. 旁濾胞細胞と濾胞上皮細胞の間には, デスモゾームによる結合がまれに認められる.
2∼4週間にわたって高カルシウム血症を起こさせたラットでは, 旁濾胞細胞の分泌顆粒の数は著明に減少する. ゴルジ野は拡大して多数のゴルジ小胞と前分泌顆粒が見られ, 粗面小胞体もよく発達する. このような像は顆粒の形成と分泌の亢進を示すものと考えられる.
旁濾胞細胞の分泌顆粒は, 他の蛋白腺と同様に, 粗面小胞体-ゴルジ装置系で形成されると思われる.
旁濾胞細胞の分泌顆粒が逆パイノサイトーシスにより分泌されることを示唆する像が少数認められたが, これを唯一の分泌形式であると断定することはむずかしい.
2. 上皮小体細胞は長期の高カルシウム血症により次のような変化を示す. 分泌顆粒は増加し, 粗面小胞体-ゴルジ装置系の発達は悪くなり, 細胞膜の入りこみは減少し, 細胞内に脂肪滴が増加する. これらの変化はパラトルモンの合成と分泌の長期にわたる抑制によるものと考えられる. また少数の細胞には, 巨大なミトコンドリアと内腔の拡張した粗面小胞体が出現するが, このような細胞は変性過程にあるものと考えられる.