2020 年 61 巻 5 号 p. 564-569
塗抹標本の血液形態検査は,血液疾患を診断する上で必須の臨床検査である。日本において,血液形態検査は,臨床検査技師がガラススライドに塗沫標本を作成し,メイギムザ染色を行って鏡検する検査法が現在でも続けられている。この方法はgold standardとされているが,多大な労力と臨床検査技師の継続的トレーニングを必要とし,検査者による精度のバラツキも避けられない。人工知能(AI)技術,特に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の医療分野への利活用は,近年めざましいものがある。本総説では,我々の研究チームが開発したCNNを基盤とする血液像分析システムを紹介する。AI技術による自動血液像分析システムは,まず,血液細胞をデジタル画像として解析装置に取り込む必要がある。今後,自動血液像分析システムを日常診療へ普及させるためには,血液学の分野においてもデジタルプラットフォームの構築が必要である。