1974 年 36 巻 5 号 p. 367-378
麻酔したウサギの十二指腸を結紮し, あるいは結紮せずに, 粗性コレラエンテロトキシンを注入すると, 腸クロム親和 (EC) 細胞に基底果粒の顕著な放出像がみられる. この脱果粒はトキシン注入後15分の例にすでにみとめられ, 4時間例でもなお見られる. EC細胞の果粒は膨大し, いちじるしく電子密度が低下し, 細胞の底面と側面に開口する.
EC細胞は腸内腔に突出する微絨毛によってコレラトキシンの刺激を受容し, セロトニンおよび未確認のポリペプチドホルモンを放出するものと想定される. そしてこれらの物質が“下痢発症媒介物質”としてコレラ中毒に特有の腸液過剰分泌をひきおこすものと考えられる.