抄録
たえず伸長する齧歯類の齧歯の歯根膜の態度を究める為に, 天竺鼠の下顎齧歯の歯肉から出た部を切除し, 間断なく伸長するのを増進せしめ, 日を追つて夫々の歯根膜の変化を観察し, 特にその線維の状態と超構密度に注意した. 咬合圧から免れた歯の歯根膜線維束は弛緩して波状となり, 線維が次第に細くなり, 且つ排列が乱れ, 線維束間の空間もやや増大し, 疎性結織が増加する. 歯側5分の2と槽側5分の3の境の辺りには線維が叢状の箇所があり, ここには疎超構の均質な物質と密超構の粒子状物のほかに, それから出来たと思へるやはり密超構の極く細い線維を見, 後者が疎超構の段階を経て甚だ疎超構の膠原線維となる現象のほかに, なほ線維束端が疎超構の均質な物質へ分散する溶解の現象が併せ行はれている事実を見, これにより歯根膜が絶えず成長する歯牙を歯槽に固定しつつも, その外方に伸びるのを許すことが領解せられた.