Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
マウスのパイエル板の定性および定量形態学的観察
阿部 和厚伊藤 隆
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1977 年 40 巻 5 号 p. 407-420

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抄録
成熟マウスのパイエル板を光学顕微鏡で観察した. パイエル板は胚中心, 濾胞域, 旁濾胞域, 円蓋域の4部に分けられる. 胚中心は明調帯と暗調帯とから成る. 濾胞域は胚中心とくにその明調帯を囲む. 旁濾胞域は濾胞域を囲み, 立方形の内皮細胞をそなえる後毛細血管性細静脈を含む. 円蓋域は濾胞域の上部で, 腸内腔へ突出する. 円蓋域をおおう上皮内には, 多くの小リンパ球が侵入している.
パイエル板の各部位の体積について組織学的定量を行なうと, 胚中心, 濾胞域, 旁濾胞域はパイエル板の中でほぼ同様の体積を占めるが, 円蓋域は小さく, 10%以下を占めるにすぎない. パイエル板の小リンパ球は胚中心に8.4%, 濾胞域に58.2%, 旁濾胞域に26.7%, 円蓋域に3.8%含まれる. 上皮内リンパ球は円蓋で絨毛のほぼ2倍多い. 円蓋の上皮内リンパ球は, その約半数が上皮細胞の核より上方にあり, 腸内腔へ出ていくと考えられる.
パイエル板の定性的ならびに定量的観察所見は, パイエル板が形態的にも機能的にも末梢リンパ組織に属することを示唆する.
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© 国際組織細胞学会
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