1981 年 44 巻 5 号 p. 439-452
ラット甲状腺の濾胞上皮細胞内のペルオキシダーゼの局在, およびマウス甲状腺の濾胞上皮細胞内のチアミンピロフォスファターゼと酸性フォスファターゼの局在と, 長時間浸漬によるオスミウム酸染色の結果を比較検討した.
細胞上部のほとんどすべての分泌果粒 (径100-200nm) はペルオキシダーゼ陽性を呈するが, 再吸収コロイド滴は陰性である. 加えて粗面小胞体腔, 核膜腔, ゴルジ装置のとくにトランス側から1-3層の層板の内腔, 濾胞腔周辺部のコロイドが陽性を呈する.
チアミンピロフォスファターゼの反応産物は, ゴルジ装置のトランス側から1-3層の層板の内腔およびその近くの小胞に局在する. まれにリジッド層板にもみられる.
酸性フォスファターゼはゴルジ装置のトランス側から1-3層の層板の内腔, トランス側の滑面および被覆小胞, リジッド層板, 水解小体, いくつかのコロイド滴に局在する.
したがってチアミンピロフォスファターゼ陽性域と酸性フォスファターゼ陽性域はかなりよく重なる. 一方, 長期オスミウム酸浸漬によって染まるのはゴルジ装置のシス側の1-2層の層板の内腔である.
甲状腺濾胞上皮細胞のゴルジ装置には機能的な極性があり, またGERLはゴルジ装置の一部と考えるのが至当と思われる.