Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
人と諸動物の長く放置せられた乳汁の微視検査
仁科 恒夫
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1953 年 5 巻 2 号 p. 163-175

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抄録

人と諸動物の乳汁を5-37°Cに放置し, 乳球をアルコール溶性の Viktoriablau, 脂溶性の Sudan III, 水溶性の Safranin で染めて比較観察した. 云うまでもなく Viktoriablau は遊離類脂質を, Sudan III は真性脂肪を, Safranin は蛋白質を主に染める. 各動物共に放置乳中の乳球は始めは殆んどみな Sudan III に橙赤に染り, Viktoriablau と Safranin には染らないが, 時の経過と共にこれ等に染る乳球が増す. 又 Viktoriablau と Safranin に染る乳球は各動物共に30°C内外の温度に放置せられた時に最も早く, 多く出現する. Viktoriablau と Safranin に染る乳球の放置乳中に出現する程度は, 天竺鼠>豚>人>山羊>牛の順であって, 大体比較的脂肪と蛋白質が多く乳糖の少い乳汁が上位に, 乳糖の比較的多い乳汁が下位にある. 又成乳よりも初乳にこれ等の可染物象が速く, 多く現れる. 放置乳中に Viktoriablau と Safranin に染る乳球が出現するのは, 乳汁が本来有する種々の酵素と放置中に増殖する種々の細菌が出す酵素の作用に依って乳球が多少分解し, Lipoide が脱仮面される為と解せられる.

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© 国際組織細胞学会
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