抄録
Recklinghausen 氏病皮膚腫瘍は末梢神経終末部の神経小束の Schwann 氏細胞の病的増殖に起因する. 即ち Kohn 氏副細胞に由来する1種の病的内分泌腺であり, 且つ新生血管の豊富なこと及び分布神経線維の終末態度を考慮するならば1種のパラガングリオンに所属する病的内分泌腺と思考される.
本腫瘍は最初に形成された古い部分から徐々に退行変性に陥るが, 一方神経束の中心方に向って其新生が進められる.
腫瘍細胞は周辺に向って増殖拡散し, 毛嚢, 毛嚢腺, 立毛筋, 汗腺, 正常神経束等を包埋するが, 之等組織の内部に迄浸潤し之等の破壤を来す事はない.
腫瘍内に見られる多数の植物神経線維は一般パラガングリオン内に見られる特有な終末網に移行し, 腫瘍細胞に接触的主宰関係を示す. 知覚線維も腫瘍内に進入し, 甚だ屡々分岐に依る新生線維を伴う. 之等線維は特有な迂曲走行と太さの変化とを示し, 髄鞘を失った後, 多くは太さの変化に富んだ分岐性終末に移行するが, 又屡々糸毬状終末に移行する. 以上の様に本腫瘍内には反射路の存在が明かである.
腫瘍組織が退行変性に陥らない限り, 其中に閉じ込められた汗腺, 毛嚢等は何れも正常形を保ち, 且つ之等に対する植物線維の終末も一般植物性終網に依り表わされている. 又腫瘍内の各神経要素も何等病的変性に陥らない. 然し腫瘍が一度び退行変性に陥るならば之等神経要素も他の諸組織と共に退行現象を表わすに至る. 腫瘍の退行変性は膠様変性に所属する.