Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
哺乳類橋内顔面神経の走行について. III
松尾 由也阿部 源阿部 利吉加藤 盛雄斉藤 逵夫
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1955 年 9 巻 3 号 p. 441-445

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抄録

表題の研究IとIIに於いては猿類, 擬猴類, 鯨類, 翼手類, 食虫類, 貧歯類, 有袋類, 食肉類, 齧歯類, 及び単孔類に属する哺乳動物に就いてその橋内顔面神経の走行を研究したが, 我々は一連の研究として, 有蹄類所属の13種動物 (馬, 豚, アジア驢馬, 羊, 山羊, 河馬, キリン, チェブローテン, 鹿, 水牛, バビルサ, ヤク及び両峰ラクダ) に就いて同様研究をなした.
有蹄類に於いても橋内顔面神経は第1部, 膝, 第2部を作って走行することは同様であるが, 第1部及び第2部線維の走行は研究I及びIIに於ける哺乳動物同様, 決して単純で定型的ではなく, 動物によって多少の相異を示している. 即ち第1部線維は全材料動物に於いて, 外転神経核の下方で現れ始め, 外転神経核出現後は該核背側を通って膝に入るのが一般的であるが, 水牛, 鹿及びヤクでは, 該核を貫通する線維も多数ある. 両峰ラクダ及びバビルサの第1部線維はすべて該核を貫通してゐるのが特有である.
第2部線維は外転神経核上端に於いては該核の背側を外方に走るのが一般的であるが, 両峰ラクダとバビルサでは該核を貫通する線維も含んでゐるのが例外的である.
膝は表記の研究IとIIに於ける他の哺乳類と異り, 有蹄類では殆んど全部が外転神経核の背方でその内側寄りに走っていて, 我々の所謂第III型に属し, たゞ1例豚に於いてのみ該核上でその真上を走っている (第I型), 即ち我々が研究した13種の有蹄類動物では外転神経核の外側寄りに走るもの (第II型) は存在せず, その大部分が人と同じく第III型を示している.

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© 国際組織細胞学会
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