Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
哺乳類橋内顔面神経の走行について. II
杉本 力夫田中 耕三加藤 盛雄森田 昭夫
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1955 年 9 巻 3 号 p. 433-439

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抄録

私達は表題の研究Iに於いて猿類, 擬猴類, 鯨類, 翼手類, 食虫類, 貧歯類, 有袋類, 及び単孔類に属する20種類の動物に就いて研究したが, 1連の研究の続きとして食肉類 (豹, 犬, オットセイ, アシカ, ラッコ, ハイヱナ, 狐, 海豹, 狸, ライオン, アメリカ熊, クマテン, 猫) 及び齧歯類 (家鼠, 栗鼠, ジェルボア, モルモット, 家兎, 豪猪) に属する19種類の動物の橋内顔面神経の走行を観察し, 研究Iと畧々同様の知見を得た.
これ等動物の橋内顔面神経は顔面神経核の背面より発して第1部, 膝, 第2部を形成し, 膝はすべて外転神経核出現以前に形成される. 外転神経核出現後の第1部線維の走行は動物の種類によって異り, 該核を外背側から包むもの, 核内を貫通するもの及び貫通する線維と核を腹側から包む線維を混合するもの等があり, 複雑である. 膝が外転神経核の背側に位することは各動物に共通であるが, その位置は該核を基準にしてその中央に位する種類 (豹, 犬, オットセイ, アシカ), 外側に位する種類 (ラッコ, ハイヱナ, 狐, 海豹, 狸, 家鼠) 及び内側に位する種類 (アメリカ熊, ライオン, 家兎, モルモット, クマテン, 猫, 栗鼠, ジェルボア, 豪猪) 等があり, 私達はこれを夫々I型, II型及びIII型として区別した, 膝は外転神経核の上端で外方に方向を転じて第2部に移行する. 外転神経核残存中第2部は一般に該核の背側を外方に走るが, 1部分之を貫通する線維も認められる.
I型及びII型の動物の膝の位置はIII型の動物のそれより余程外側になっているにも拘らず, その孤束核は皆大体同じ位置を示し而も形態学的に発達の差異が認められない.
又II型とIII型では膝の位置がかなりの隔りをもつにも拘らず, その顔面神経核の位置は大体皆同じである. これらの事実は, 第1部及び第2部の線維が一様でなく, 色々異った走行を示す線維を含んでいることゝ共に Kappers の neurobiotaxis 説では説明しがたい所見である.
食肉類及び齧歯類の橋内顔面神経の走行は研究Iでも論じたように, 動物の種類によってかなりの相異を示し, 人間のそれに較べれば遙かに単純であるが, 然も尚色々の走行を示す線維を有してかなり複雑である.

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© 国際組織細胞学会
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