青森大学付属総合研究所紀要
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三厩梨の記録について
竹内 健悟
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2024 年 25 巻 2 号 p. 7-17

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抄録
本稿は、現在存在しないものの断片的な記録が散見される「三厩梨」について,入手可能な記録を収集し,そこから推定も含めつつも三厩梨という歴史的存在を描き出すことを目的とした.調査の結果,三厩梨について以下のようにまとめることができた.三厩梨は,江戸時代は津軽地方の特産の果実であったが,明治以降は栽培されなくなった.元禄年間の頃,三厩村の新谷勘兵衛の屋敷に芽生えた木を育てたところ,おいしい梨の実がなったため,弘前藩がこの木を管理するようになった.収穫期になると実り具合が報告され,役人が来て収穫をした.この木は初めは三厩でのみ栽培されていたが,接木によって栽培の本数,場所を増やし,藩内に広く植えられるようになった.実は大きく甘く,形の特徴から中国梨の一種と推定されている.三厩梨は,江戸に送られ,幕府の重役に献上されるほど珍重されたものであったが,明治に入って津軽地方でリンゴ栽培が盛んになると,姿を消していった.
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