抄録
2008年5月現在,日本におけるFSC森林認証制度のCoC(Chain of custody)認証件数は697件と世界第3位であり,その8割を紙パルプ業界が占めている。世界的に木材製品加工業界が認証の中心となっている現状からみると,この傾向はわが国特有のものと考えられる。本研究では,日本において急速に認証が拡大してきた経緯を明らかにし,今後の展望と課題を探った。紙パルプ業界における初期のCoC認証は,大手製紙会社を起点とする関連企業への波及的広がりであった。業界は2001年から森林認証への取組みを加速させたのに対し,社会的に森林認証紙製品が古紙に代わる環境製品として容認され始めたのは2004年頃からであった。国内大手製紙会社や卸業者による相次ぐ認証取得といった供給側の動きと,企業を中心とする認証紙製品への関心の高まりがあいまって,近年は印刷などより川下の業種にまで認証が拡大してきた。しかし消費者にFSCが十分に周知されていないことに加え,今後FSC以外の森林認証制度による認証製品の増加が見込まれることから,市場の開拓と消費者の混乱回避のために企業は積極的に情報を発信する必要がある。