2018 年 27 巻 2 号 p. 9-15
樹木は樹齢が高くサイズが大きいほど枝葉までの通水経路が長くなる上,年々増加する枝の分岐や節数により水分通道度が低下する。樹木の道管直径が高さに伴い連続的に細くなる現象 (tapering)は,高木の樹高成長に伴う水分通道度の低下を補償すると考えられている。本研究では樹高約25 m,樹齢約100 年のクスノキ(Cinnamomum camphora)の木部の組織構造を異なる高さで比較し,木部構造の変化に対する高さの効果を調査した。道管直径(D)は樹幹下部より上部で小さく,道管密度は樹幹上部の方が高かった。各年輪内においてD は早材から晩材にかけて季節の変化に伴って小さくなったが,その減少のしかたは,高さによらず一定であった。また道管直径から算出した木部断面積当たりの水分通道度は樹幹上部で下部より著しく低く,これには樹幹上部に直径250 μm 以上の道管が殆ど存在しない事が寄与していた。本研究で観察された木部の組織構造の垂直的変化は,老大木の個体内における通水効率の維持や通水制限の緩和に寄与していると考えられる。