熊本県は2016年4月に2つの震度7の巨大地震に襲われた。本研究ではこの2016年熊本地震による土砂災害(土石流,地すべりおよび崩壊)について論じる。土石流の流出特性は渓床勾配と土砂濃度の関係をもとに考察し,地すべりと崩壊の発生は斜面安定解析をもとに考察する。とくに斜面安定解析では,半無限長斜面に対して降雨時と地震時の計算条件を設定し,斜面災害の発生要因に着目して解析を行った。それらの結果,高濃度の微細砂を含む流れでは粒子サイズの小さい材料が間隙水の密度を高め,緩勾配の渓流で土砂流または泥流を形成し,渓床勾配が非常に小さくても下流に到達して氾濫する可能性があった。地すべりと崩壊では,地震による繰返し荷重によって過剰間隙水圧が発生し,すべり面近くのせん断強度が低下して山腹斜面が安定性を失い,瞬時に崩壊したと推察された。地震動によるせん断強度の低下を適切に見積もることにより,これまで雨では崩れなかった山腹斜面であっても土砂移動の発生を説明できることがわかった。さらに,地震の規模によっては崩壊等が発生しなかった可能性もあったことから,今回の熊本地震はまさに未曾有の規模の地震だったといえる。