森林応用研究
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短報
本山寺五重塔の用材樹種
−コウヤマキの利用について−
横山 操伊東 隆夫
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2026 年 34 巻 2 号 p. 19-25

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抄録

本研究は,1910年(明治43年)に竣工した香川県三豊市の重要文化財・本山寺五重塔を対象とし,その用材選定における合理的根拠を考察したものである。2015年から2019年の「平成の大修理」に際し,108点の構造部材から採取した試料について,光学顕微鏡による細胞組織の形態的特徴から樹種識別を行った。分析の結果,心柱の一部に加え,三重目の主要構造材(四天柱および側柱)にコウヤマキ(Sciadopitys verticillata)が選択的に用いられていること,さらに主要柱材の樹種が階層ごとに体系的に使い分けられている実態を明らかにした。こうした特異な樹種構成は,単なる材料物性のみでは説明し得ない。むしろ,明治期の森林法制に起因する資材供給上の制約や,古社寺保存法が標榜した意匠重視の保存哲学,さらには高野山信仰に基づく宗教的象徴性といった,当時の社会的・制度的文脈を色濃く反映している。本山寺五重塔の用材における樹種選定は,明治期特有の文化的・制度的条件下において,入手可能な木材を最適に配分した,極めて合理的な意思決定の帰結であると解釈される。

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