抄録
サクラは有用な樹木として,交配による育種や組織培養が行われてきた。勝山町指定天然記念物「四季桜」の茎頂培養中に,カルスが葉,茎部に形成された。そのため,植物体の再生を目的とした葉片の液体培養を行った。「四季桜」の葉片を,オーキシンを中心に,NAAとIBA, IBAとIAA, IAAとBA, BAと2,4-D, 2,4-DとIBAを組み合わせたMS液体培地で60日間振とう培養した(24℃,100r.p.m.,暗黒下)。その結果,微量のカルスが広範囲のホルモン条件で形成された。特に高濃度のNAAでカルスから不定根の形成が認められ,他の組み合わせでは多くの場合葉片が褐変した。これらのカルスは光条件と培地の濃度,糖の種類を変えたMS培地で60日間振とう培養したが,変化は確認されなかった。系統別では,哲西町のオオシマザクラ系「御衣黄」の葉片をNAA100uM含むMS寒天培地で培養したところ,7日間で切断面にカルスを形成し,不定根が発生した。落合町のエドヒガン系「醍醐桜」では微量のカルスを形成したが褐変した。いずれの場合も不定芽の形成は認められなかった。