抄録
高知県が1993年から行った「ふるさと定住促進モデル事業」では,県内12の町村が若者向けの定住住宅の建設を計画,実行している。これらの住宅は,永住を目的としたものではなく,一時的に流出を食い止めることや,定住のきっかけを作るのが役割である。本研究では,これら若者定住住宅は,はたして若者の定住促進に効果をあげたのか,またその問題点はどこなのかを明らかにし,さらなる若者定住に向けての方針,方向性を考える上での一つの基礎資料となるものを導き出すことを目的とする。高知県内で若者定住住宅を建設した町村のうち,特に若者夫婦を対象としている6町村を選び,各役場の協力を得て,それぞれの住宅の入居者にアンケートを実施,その結果を分析した。アンケートは106通を配布し,44通を回収した。うち,独身の2世帯を除く42世帯について分析を行った。世帯主はほとんどが当該町村内出身者であり20〜30歳代が85%を占めていた。そのうち18世帯に定住の意思が感じられ,こうした住宅は,地域の若年層の流出防止に役立っていると考えられる。定住するか否かという意思決定には,親の存在が影響を与えることが示唆された。