アプライド・セラピューティクス
Online ISSN : 2432-9185
Print ISSN : 1884-4278
ISSN-L : 1884-4278
市販義歯安定剤と種々の口腔内崩壊および舌下に用いる医療用医薬品との相互作用
梅村 雅之 邑松 俊亮福谷 勇真池上 雄貴吉田 彩乃柳原 保脇屋 義文
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 12 巻 p. 11-18

詳細
抄録

医薬品と医療器材の相互作用として、輸液チューブやフィルター等のプラスチック製品に対する吸着や収着があり、これらが原因となり、適正な投与量の確保ができない場合がある。特に、口腔内には、義歯や義歯安定剤等のプラスチック製品が汎用されているが、これらと医薬品との相互作用についてはほとんど報告されていない。そこで、口腔内スプレー剤、舌下錠、および口腔内崩壊錠(OD)錠について、義歯安定剤との相互作用の有無を検討した。 不溶性義歯安定剤を13種類の医薬品の水溶液に約1時間接触し、溶液中の医薬品の残存率を1H-NMRで測定し、吸着率を算出した。その結果、義歯安定剤と各種薬剤を接触した場合の吸着率は、9種類の薬剤において5%以下であった。一方、OD錠のバルサルタンとイルベサルタンの吸着率は、それぞれ20および45%、舌下に用いる硝酸イソソルビドとニトログリセリンは、それぞれ70および35%であり、コントロールと比較し、それらの吸着率は有意(P<0.05)に高かった。さらに、これらの4つの医薬品の吸着率は分配係数と相関(P<0.05)した。 これらの結果より、口腔内に留めることが多い舌下あるいはOD錠は、義歯安定剤を使用している患者では、吸着や収着によって治療効果が低下する可能性が示唆された。今後、さらに吸着の危険性のある医薬品を探索する必要があると考えられる。

著者関連情報
© 2019 日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
前の記事
feedback
Top