国民医療費の増加は、医療の発展や高齢化に伴い、生じてしまう問題である。政府は国民医療費の抑制の制度の1つとして、2024年10月より後発医薬品(GE)のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養を開始した。そこで、保険薬局における選定療養制度の開始後のGE使用率の変化および薬剤師による選定療養の説明状況についての実態調査を行った。その結果、2024年10月以降、総処方箋枚数が前年比で約7%程度増加しているにも関わらず、GE使用率は全店舗の平均で選定療養制度の開始3ヶ月後には91.2%に増加し、過去最大となった。埼玉県と東京都のGE使用率の地域差は若干の上昇の経過に違いは認められたが、埼玉県では選定療養制度が開始された2024年10月より前年比で有意なGE使用率の上昇(p=0.034)、東京都では2ヶ月遅れて前年比との有意な上昇(p<0.001)となり、選定療養制度の開始3ヶ月以内にどちらも有意な上昇を認めた。したがって、選定療養制度はGE使用率の上昇に影響を与えたことが考えられた。これは、制度開始による医療費の自己負担が増加することへの患者の懸念だけでなく、約2,500名もの選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して制度やGEについて薬剤師が説明を行ったこともGE使用率に影響を与えた可能性が推察された。医療財政の逼迫を考えると、先発医薬品の特許が切れた後は、AGを含むGEの使用へと医療制度が移行していくことが望ましいと考えられた。
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